トヨタが「カローラ」SUVを国内発売。出だし好調も残る懸念
トヨタ自動車は、主力車種「カローラ」シリーズで初のスポーツ多目的車(SUV)「カローラクロス」を日本で発売した。ブランドの根幹である良品廉価を追求しつつ、日本仕様では上質さを増した意匠を採用。またモデル初のハイブリッド車(HV)4輪駆動タイプを設定した。初代発売から55年。ニーズに合わせて時代ごとに車形を変えてきた主力車種は、売れ筋のSUVをラインアップに加え、さらなる発展を図る。
「セダンと同等の価格帯でSUVを提供する」との思いを開発から製造、取引先までが共有。価格は199万9000円から319万9000円(消費税込み)に抑えつつ、広い車室空間や荷室など使い勝手の良いSUVに仕上げた。上田泰史チーフエンジニア(CE)は「良品廉価とプラスアルファの価値、変化への対応というカローラらしさを追求した」と胸を張る。日本仕様にはパノラマルーフを設定し、視界の解放感を向上。30―40代のファミリー層を中心顧客に据える。
カローラクロスは2020年にタイで生産を立ち上げ、グローバルで順次発売。日本での生産はタイ、台湾、ブラジルに続く4カ国目で、高岡工場(愛知県豊田市)で生産する。東南アジアで立ち上げた後で先進国に投入する例は珍しいが、ブランド力と各地のモノづくり力の向上、新設計思想「TNGA」による共通規格により実現した。今後はニーズに合わせたより柔軟な生産地選定と投入計画が進みそうだ。
販売目標は月4400台で、事前受注は1万3500台と出だしは好調だ。懸念はコロナ禍や半導体不足。「1台でも早く届けたい」(上田CE)とするが、10月も減産を計画するなど影響は不透明だ。車両供給が遅れれば機会損失にもつながりかねない。逆境での船出となったが、主力ブランドとしての意地を見せられるか。
日刊工業新聞2021年9月15日