重量半分以下の鉛蓄電池を実現した中小企業の独自技術がスゴイ
高崎電化工業所(群馬県高崎市、加藤英明社長)は、鉛合金の代わりにアルミニウム素材に鉛をメッキした電極を使い、重量を従来の半分以下にした鉛蓄電池を作製した。電気伝導率の高いアルミニウム素材に鉛メッキ処理できる独自技術を活用した。今後さらに大面積に鉛メッキを均一に被覆する研究開発を進め、太陽光発電向け蓄電池用電極板の実用化を目指す。
車載用に使うことが多い鉛蓄電池は重量が重い半面、リサイクル性に優れ、低コストで安全・長寿命という利点がある。ただ、軽量化を目的に電気伝導率の高い金属表面を鉛で被覆すると、ピンホールと呼ばれる小穴から電解液が浸透し電極板が腐食するのが難点だった。
同社はピンホールの発生メカニズムを解析しつつ、独自手法でこの問題を解決、特許を取得した。鉛合金に比べて重量が4分の1で電気伝導率が約7倍のアルミニウムを使い、厚さが0・4ミリメートルの正極板・負極板を作製。この電極板を用いて12ボルト22アンペア時で重量が2700グラムの鉛蓄電池を試作した。
この結果、社内実験では30分で87%充電できることを確認した。エネルギー密度の大幅な向上に加えて、内部抵抗が少ないため夏場の充電でも30度C程度に抑えられることも分かった。アルミニウムを採用した鉛蓄電池の開発で高エネルギー密度化とコスト低減につながり、用途や市場の拡大も期待できる。
同社が着目しているのは太陽光発電向け蓄電池。発電効率を高めた鉛蓄電池を供給できれば、原料のリチウムの需給緩和に役立つ可能性がある。
日刊工業新聞2021年9月7日