日産「リーフ」の電池再利用を下支えしてきた4R、EV拡販の好循環に手応え
日産自動車が2010年12月に電気自動車(EV)「リーフ」を発売してから10年。電池交換の目安は約10年とされ、使用済み電池の回収が本格化する。日産は関連会社を通じて、これまで実証を行い使用済み電池の再利用技術を確立し、再生電池の販路も開拓してきた。10年後の使用済み電池の買い取り価格を事前に定める検討も開始。EVの資産価値向上による新車購入費用の負担軽減が見込まれ、電池の再利用からEV拡販の好循環が期待される。(西沢亮)
「使用済み電池の競争力を生かせる市場が分かってきた」。EVの使用済み電池(中古電池)の再利用を手がけるフォーアールエナジー(4R、横浜市西区)の牧野英治社長は手応えを感じている。
4Rは日産と住友商事が出資し、リーフ発売3カ月前の10年9月に設立された。一般にEV用リチウムイオン電池は10年程度で性能が3割ほど下がり、交換時期を迎えるとされる。4Rはリーフの中古電池の回収本格化を見据え、同じ電池を使った家庭用蓄電池を商品化して市場ニーズを把握するなど、事業化を模索してきた。
4Rはこれまでにリーフの電池を回収し、モジュールごとに性能を測定する手法を開発。電池の劣化をシミュレーションする技術も確立した。こうした技術を使いモジュールの残容量などを評価。性能の高い順に三つに分類し、分けたモジュールごとに組み合わせて電池を再生する。最高ランクの再生電池はリーフの純正交換用電池として販売。その他は複数の電池を組み合わせ、蓄電や非常用電源に使う定置型電池などとして提供する。
これまでに太陽光発電の蓄電池や踏切のバックアップ電源などに試験採用された。鉛蓄電池と比べ、人による保守が不要になるなど使い勝手も良い。車載用に欠かせない高い安全性や、中古品としての価格競争力以外にも市場の評価は高いという。
再利用の本格化で中古電池の買い取り価格の引き上げや、それに伴う中古EVの下取り価格の向上が見込まれる。
例えば4Rが10年後の使用済み電池の買い取り価格を事前に現状よりも高く設定。日産は中古EVの資産価値向上により、将来の下取り価格を想定して新車との差額分を支払う自動車ローン「残価設定ローン」をより求めやすく組むことが可能になる。消費者にとってはEVの新車購入費用の負担軽減が期待される。4Rの牧野社長はローンの設定などは日産が決めることとした上で、「10年後の中古電池の買い取り価格を日産にコミット(約束)する取り組みを始めた」という。
リーフの世界累計販売は約50万台。海外でも中古電池の回収増が見込まれ、牧野社長は「4Rの資産を横展開して海外でも事業を広げたい」と意気込む。また日産の独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」に搭載した電池の再利用では「特性に合った市場を吟味して準備をしている」(牧野社長)と既に着手する。連合を組む三菱自動車など他社製電動車の電池再利用にも「是非やりたい」(同)と、車載電池の再利用事業を世界で広げる考えだ。