トヨタ系非上場部品メーカーで広がる環境対応、受注競争力強化につなげられるか
トヨタ自動車と取引の多い非上場部品メーカーに、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応の動きが広がってきた。三五(名古屋市熱田区、恒川幸三社長)は、2022年度に生産関連の二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比4割減らす目標を策定した。FTS(愛知県豊田市、落合宏行社長)も製品設計や生産でCO2削減の工夫を凝らす。環境対応を進めつつ、受注の競争力向上にもつなげる。(名古屋・山岸渉)
【変化点を好機に】
三五の坂田浩己取締役執行役員は「変化点をチャンスとして取り組みたい」と意気込む。同社はマフラーを得意とする。カーボンニュートラルを巡る動きを踏まえ、22年度までの新目標を設定した。新たな生産技術の開発と植樹活動に力を入れる。生産は工程の集約や削減、新工法の採用など。使用電力量を減らし生産関連のCO2を13年度比4割削減する。
植樹は「国連の持続可能な開発目標(SDGs)が注目される前から本気でやっている」(坂田取締役)と強調する。6月で累計30万本を達成した。22年度には累計32万2000本を目指す。三五は環境長期ビジョンを17年に設定。生産で30年までにCO2を16年比4割削減する目標を掲げた。また、車の電動化が加速する中、モーターシャフトなど関連製品の開発を進めている。ゆくゆくは「一定の事業として確立させたい」(同)考えだ。
【目標は半減以上】
一方、燃料タンクなどを手がけるFTSは、30年度のCO2排出量を13年度比半減以上とする目標を設定した。開発設計や生産でのCO2削減の取り組みを進める。
製品は材料の剛性を高いものに変え薄肉化したり、部品点数を削減して軽量化したりする。これらにより加工時間などを減らし、CO2削減につなげる。特に樹脂製や鉄製の燃料タンクといった、燃料系システムにフォーカスする。生産にヒートポンプなどによる熱の活用も検討する。
【まずは自力で】
落合社長は「まずはグリーン調達に頼らず、自力でCO2を削減できるようにする。それは競争力向上につながる」と説明する。5月に全社組織を立ち上げ、全従業員がCO2削減に取り組む土壌を整えた。
カーボンニュートラルを巡りトヨタ系部品メーカーは、上場企業が目標設定に動いている。例えばデンソーは、35年にカーボンニュートラル達成を目指すと公表した。三五やFTSのような非上場企業にも今後、CO2削減目標などを公表し、取り組みを積極化する動きが広がりそうだ。