半導体の世界的不足で発揮するトヨタのBCP力
自動車向け半導体が世界的に不足する中、トヨタ自動車への影響は軽微にとどまっている。トヨタ幹部は「半導体の需給はまだまだ逼迫(ひっぱく)している」とした上で、「現時点で車両生産への影響は限定的」との見方を示す。その背景には、東日本大震災の発生を契機に取り組んできた事業継続計画(BCP)の高度化がある。コロナ禍の脅威も依然として横たわる中、サプライヤーとの連携をさらに深め、未曽有の難局を乗り切る構えだ。(名古屋編集委員・長塚崇寛)
サプライヤーと連携
トヨタの半導体の調達は「リスクの高い状況ではあるが、連日連夜、供給継続に向けて取り組んでいる」(トヨタ幹部)状況で、米国や中国、欧州の一部車両に影響が出ているものの、おおむね計画通りに生産を続けている。トヨタは20年11月の時点で20年度の生産計画を国内で前年度比12・2%減の290万台、海外で同1・6%減の535万台に設定していた。
車両生産への影響を軽微に抑えられているのも、震災以降に再構築してきたBCPの取り組みがあるためだ。半導体のように生産のリードタイムが長い部品は、トヨタの技術部とサプライヤーが連携し、代替生産の事前検討や評価を実施。その上でサプライヤーには約4カ月分の在庫を確保してもらっている。
平時の取り組みとともに、今回はトヨタの調達部門などがサプライヤーに出向き、品番ごとの在庫管理や生産・物流の状況などを詳細に分析。トヨタ幹部は「こうした地道な取り組みが、影響を限定的にできている要因だ」と話す。
車載半導体は「20年10―12月期くらいから増産に取りかかったと認識している」(トヨタ幹部)という。半導体は通常、生産開始から2―3カ月後に出荷される。ただ車部品メーカーの一部では「在庫を多めに確保しようと必要数の倍以上を発注している」(同)ところもあり「安定調達にはしばらく時間がかかる」(トヨタ系サプライヤー幹部)と見る向きもある。
今後の課題は半導体業界との関係強化だ。半導体メーカーはティア1(1次取引先)などの部品メーカーと取引をしており、車メーカーが関わることは少ないという。今回を教訓に「ティア(取引先の階層)を超えて半導体メーカーと情報交換する必要がある」(同)と強調する。
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