夜間の雪道でも歩行者をしっかり認識、北大が開発した画像識別技術の仕組み
RGB・サーマルデータ統合
北海道大学のヴァクナマス・シラウイッチ大学院生と江丸貴紀准教授らは、積雪の状況に強い画像識別技術を開発した。サーマルカメラと通常カメラのデータを一緒に画像識別する。夜間の雪道で歩行者検出の精度が平均で17・8%向上した。夜間は人体と風景でサーマルカメラのコントラストが大きく、識別しやすくなった。
通常のRGBカメラとサーマルカメラで撮影した1571枚の画像データセットを作成した。「道」や「雪山」、「建物」など9種類の正解情報を与えている。昼と夜に撮影し、画像面積で「道」が17・3%、「歩行者」が2・2%含まれる。このデータセットを既存の六つの人工知能(AI)モデルに学習させた。RGB画像データと熱画像データをそれぞれ推定して結果を統合して最終的な答えを出す。
その結果、夜間の歩行者の検出精度が全てのAIモデルで向上し、平均で17・8%の向上だった。識別精度の高いモデルでは物体検出の評価指標「IoU」が65・7%から77・6%に向上する。ほかにも「車両」や「植樹」などへの熱画像学習の影響を体系的に調べた。
今後、より大規模なデータセットとAIモデルを開発する。自動運転の普及に向けて積雪などの厳しい環境での識別性能向上が求められている。夜の雪道はRGB画像だけの歩行者検出は困難。熱画像を使うと熱源の検出は向上するが、雪山や停止車両の識別精度が落ちるなど影響がある。識別対象ごとに定量的に影響を評価することが求められていた。
日刊工業新聞2021年8月19日