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副業・兼業に賛否両論。問われる中小企業の選択

人材確保に効果/長時間労働など課題

副業・兼業を容認する中小企業は増加傾向にあるものの、慎重論も根強い。副業・兼業は社員のモチベーション向上や優秀な人材の採用につながるメリットがある半面、長時間労働や総労働時間の管理の煩雑さなどの課題も抱える。足元では、副業・兼業を積極的に進めていた中小企業でも、コロナ禍を受けて一時中止しているところもある。コロナ収束後、中小企業はいかに多様な働き方を推進していくのか、人手不足対策として大きな課題になる。

容認4.5ポイント増加

日本商工会議所がこのほど「正社員の副業・兼業に関する状況」について調べたところ、「積極的に推進している」と回答した企業は1・7%で、「容認している」企業と合わせると30・3%だった。副業・兼業を認めていると回答した企業は、2020年7月の調査と比べて4・5ポイント増加した。

また東京都が都内企業を対象に4月にまとめた調査によると、副業・兼業を認めている企業のうち33・0%が効果が「あった」「ややあった」と回答し、具体的な効果(複数回答)については「人材の定着(離職率の低下)」38・1%、「従業員のモチベーション向上」32・6%、「柔軟な働き方による優秀な人材採用」27・3%などの回答が多かった。

コロナで中止も

ただ、副業・兼業には複数のメリットがあるものの、容認していない中小企業が多数を占める。今回の日商の調査では、副業・兼業を「認めておらず、今後も検討する予定はない」と回答した企業は45・0%に達した。「現在検討している」と「将来的には検討したい」企業を含めると、副業・兼業を認めていない企業は69・7%に上る。

理由は「社員の長時間労働・過重労働につながりかねないため」が64・9%と最も多く、次いで「社員の総労働時間の把握・管理が困難なため」が53・0%で続いた。

他社の正社員について副業・兼業として受け入れているかに関しては「受け入れておらず、今のところ検討する予定はない」が64・8%と最多だった。

調査では中小企業の声も紹介しており、「人手不足の状況の中、副業・兼業は社員の長時間労働につながる上、総労働時間の管理も困難なため、認めていない」「多様な働き方の推進のため、副業・兼業は積極的に推進しているが、現在は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、一時中止している」といった指摘があった。

十分な休息設定

政府は7月30日に閣議決定した過労死防止大綱(改定版)で、例えば本業の終業から副業の始業までに十分な休息を設ける制度の導入企業を25年までに15%以上とする目標を掲げ、副業・兼業やテレワークの実態把握と推進を後押しする方針を示している。こうした枠組みの整備と、政府・自治体が副業・兼業を支援する助成金・補助金を中小企業に周知徹底させることなども今後求められる。

日刊工業新聞2021年8月5日

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