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IHIが副業解禁、人事制度で他の重工大手を先行する狙い

IHIは働き方と人材確保の両面で新機軸を打ち出した。社員約8000人を対象に副業を解禁し、社外での仕事を通じて新たな知見を吸収できるようにした。一方で、科学技術分野など専門性が高い分野の人材に特化した雇用制度を運用し、勤務形態や報酬設定で独自色を出す。これらは重工大手では先行した動きで、事業環境が厳しいなか人事の制度でも柔軟に対応し次の成長を目指す。

「さまざまな働き方に対応し、社員の成長を後押しする」。人事部の竒二(きじ)丈浩ワーク・ライフ企画グループ長は、副業の狙いをこう説明する。

1月に解禁して以降、現在約60人が副業を行っている。社会保険の関係から社内での週20時間以上の勤務が条件だ。社員からは「副業での知見により、IHIが求める方向性に対して何らかの形で貢献できる」「経験を多様化する重要性を感じる」といった声が上がり、一定の成果が出始めている。就業のスタンスを転換し、自立的なキャリア形成の効果も見込む。

副業を認めるトリガーとなったのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。需要が減少し事業所の一部が休業したため、空いた時間の有効活用を望む声が出たという。会社側としても副業先で得た経験を今後の自社の事業に生かしてもらうメリットがある。

またIHIは科学技術やデジタル技術、経営管理などで卓越した専門性や知見を持つ人材の雇用制度も運用している。業務特性に応じて勤務形態を設定でき、年間の総報酬も2000万円以上と好待遇だ。ただ、成果を出すことが目的の制度であり、原則的に有期雇用としている。研究開発などで世界的な第一人者として認められる社員も同制度に転換する形で雇用できるようにし、有能な人材を囲い込む狙いだ。

IHIは社員のキャリア形成や能力を発揮しやすい就業環境といった観点から人事関連の施策を進めている。従来の制度とは一線を画すスキームを生かして、人材の底上げにつなげる。

日刊工業新聞2021年7月27日

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