「副業・兼業先進県」が人材迎え入れで奏功したピンポイント戦略

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副業者を交えたミーティング。常勤にこだわらないことでマッチングの成功率を高めている

「移住が難しいのなら、週1日の副社長はいかが?」。鳥取県内企業での副業・兼業者が急増している。2019年から本格展開し、累計で200件を超えた。21年度の目標は100社100人。6月だけでマッチング実績は50件に達しており目標達成は確実。他県には大差をつけており、鳥取県は「副業・兼業先進県」だ。

事業の中心になっているのは、15年に県が設置した「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点(プロ拠点)」。当初は他府県同様、都市部のビジネス人材に移住就職してもらい、地元企業の課題解決を図る狙いだった。ただ設置時から携わる松井太郎戦略マネージャーは「うまくいかないのではと思っていた」という。大都市の人材は概して高給で体力の強くない地元企業には採用の負担が大きい上、そもそも「他県の人材を迎え入れる発想がなかった」(松井マネージャー)。そこで常勤にこだわらずピンポイントでマッチングする方策を検討した。

いきなり副業者受け入れを求めても無理がある。そこで松井マネージャーらは若手経営者に的を絞り、依頼に奔走した。そして現在の枠組みでスタートしたのが19年。月額3万円から5万円の報酬ながら、14社16人の求人に対し実に1400人の応募があった。この結果について松井マネージャーは「社会とのつながりを求める人は報酬にこだわらない」と分析する。

かつて副業の動機は経済的な理由が多かったが、最近では自身のキャリアアップや社会とのつながりを重視する人がほとんどだ。一方で大企業の側も、副業・兼業による人材育成が可能とあって解禁するところが飛躍的に増えている。

プロ拠点はこの3月に地元企業を対象にしたアンケートを実施した。マッチングを通じて「経営課題が解決した」「解決に向け進展している」としたところが94%に達した。また採用時と比べ「期待以上」「期待通り」との回答は76%で、クレームも皆無という。地元企業は建設、IT、不動産、金属加工、農業まで多種多様だ。

人材募集はウェブサイト経由がほとんどだが、松井マネージャーが都市部の大企業の人事部を直接訪問して依頼する例もある。成否のポイントは「外部人材を受け入れる企業文化を醸成すること」(松井マネージャー)。3年の実績による成果も顕在化。今後は「人材だけでなく企業同士のマッチングにもつなげたい」(同)と企業誘致も射程に入れる。

日刊工業新聞2021年7月30日

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