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広島の金具メーカー“鳴かず飛ばず”の自社設計製品。販売を増やした転機

広島の金具メーカー“鳴かず飛ばず”の自社設計製品。販売を増やした転機

障がい者や高齢者、女性など、多様な従業員が働きやすい環境の整備にも取り組んできた(中央で絵を掲げるのが水ノ上社長)

雨どい金具、施工時間大幅短縮

広島金具製作所(広島県福山市、水ノ上貴史社長)は建築金具、特に雨どいの取り付け金具のメーカー。取り付け時間を大幅に短縮できる金具が施工業者から好評を集め、採用を増やしつつある。建築現場のニーズに応えた製品作りを貫いて現場の人手不足に対応し、専業メーカーの責任を果たす考えだ。

今春、SDGs宣言を策定した。目標12の「つくる責任、つかう責任」では「施工性の高い、ヒロカネならではの(中略)オリジナル製品開発を継続」と掲げる。

同社が初めて施工時間を短縮できる自社設計の金具を発売したのは2004年。縦どい用の金具だった。「特許まで取ったのに鳴かず飛ばずだった」(水ノ上社長)。販路がなくPRの方法もわからなかった。

製品の開発と改良、売り込みを続け、12年には軒どいの取り付け金具を発売した。施工時間が半分になる優れものだったが、やはり当初は売れなかった。

転機になったのは16年。「吊ピタ君」と目立つ名前を付けて全国の施工業者にダイレクトメールを発送した。反応が帰ってきた会社に、北は宮城県から南は長崎県まで社長が直接訪問したという。

この業界は流通構造が複雑。施工業者の手にわたるまでに専門商社と問屋、販売店と3層の流通業者が挟まる。専門商社と問屋は、屋根材など単価の高い鋼材商品をメーンで取り扱うため、金具のような小さな商品には興味が少なく、販売も熱心ではなかった。

そこで視点を変えて施工業者を攻略していった。ラインアップの拡充も図り、施工時間が10分の1になる金具や、スレート屋根向けの金具など、他社にない商品もそろえた。

スレートラジアル屋根用の雨どい取り付け金具「吊ピタ君SR」。他社にない製品作りに力を注ぐ

施工業者からの指名買いが増えた結果、20年春には全国規模の鉄鋼商社の取り扱いも決まった。「緊急事態宣言のちょうど前に決まった。新規顧客も増えたため、新型コロナで動けなかったのに販売が増えた」(同)。

SDGs策定宣言後は、使う材料にもこだわりつつ、環境負荷の低いモノづくりを進める。

日刊工業新聞2021年8月5日

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