物流現場の生産性を高める。日立物流のAI戦略

運転手の体調など可視化

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出発前点呼でドライバーの血圧を測定(日立物流提供)

日立物流は物流現場でのさまざまなデータをセンサーネットワークやシステムで収集し、人工知能(AI)などで分析を進めている。それを物流現場に反映させることで、さらなる生産性の向上を目指す。

足元では輸送事業者の業務効率化や、事故ゼロ化を支援する安全運行管理ソリューション「SSCV」シリーズの開発に注力する。「物流現場はアナログな面が数多く残っている。だが、ESG(環境・社会・企業統治)重視の流れを踏まえると、デジタル戦略は不可欠だ」と、石山圭経営戦略本部経営戦略部長は変化を語る。

専門組織化

SSCVシリーズは見積もりや受発注、運行指示書発行、配車、管理帳票発行といった業務のデジタル化を支援する「スマート」、ドライバーの生体情報や車両状態をセンシングしてAIで分析する「セーフティー」、車両管理や整備実績が把握できる「ビークル」の三つのソリューションで構成する。「配車や安全管理、車両整備までをつなげ、輸送全体を最適化する」(石山部長)のが狙いだ。

バイタルや車の挙動でドライバーの事故リスクを予測(システムのイメージ=日立物流提供)

従来は各機能それぞれで担当者が開発していたが、昨秋に発足した「輸送事業強化プロジェクト」内の「SSCV強化グループ」に集約し、専門組織化して開発を進める。

リスク予測

「セーフティー」は運行中のドライバーの脈拍や血圧といったバイタルデータをリアルタイムで取得する。ドライバーの生体測定によって体調の可視化・数値化を行い、体調不良による事故を未然に防ぐ。出発前の点呼時に確認すれば、管理者は乗車可否の判断材料にもなる。

車両に搭載した各種デバイスが感知した生体情報、走行時の加速・減速など車両の挙動から、ドライバーの事故リスクをAIが予測。事故リスクが高いと判断した時には、ドライブレコーダーから切り出した動画とともに管理者に通知することができる。

燃料費削減

運転席付近に設置した「IoTボタン」はドライバーが危険だと思った時に自ら押すことで、その情報を職場内で共有することが可能だ。帰着後にドライバーと管理者で振り返りもできる。「エコドライブにもつながり、事業所によっては5%程度燃料費が削減できたといった効果も出ている」(同)。

理化学研究所生命機能科学研究センター、関西福祉科学大学などと共同で、運行前後の体調測定とヒヤリハット事象との相関関係を確かめるなど、産学連携も進める。AIを活用してドライバーの体調を管理しつつ、教育ツールとしても活用していく。(浅海宏規)

日刊工業新聞2021年7月16日

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