地盤改良技術で全国に施工代理店、小さな土木会社を飛躍させた特許戦略

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自然砕石を使うため環境負荷が少なく土地の価値を下げないエコジオ工法(イメージ)

尾鍋組(三重県松阪市、尾鍋哲也社長)が三重大学などと共同開発した「エコジオ工法」は、自然素材の砕石だけを使う環境負荷の少ない地盤改良技術だ。特許権を戦略的に活用した結果、施工代理店は全国に54事業所。施工件数は2万件を超える。このほど、知的財産権制度を積極的に活用した企業などを表彰する特許庁の「知財功労賞」を受賞するなど、さらなる飛躍の構えだ。(名古屋編集委員・田中弥生)

知財功労賞受賞

4月16日、東京都港区のコンベンション施設「赤坂インターシティコンファレンス」。新型コロナウイルス感染症の対策が万全に講じられた会場で、令和3年度の「知財功労賞」の授賞式が開かれた。

旭化成や島津製作所、JR西日本など、そうそうたる大企業がそろう受賞企業の中に三重県の小さな土木会社が名を連ねた。厳粛な雰囲気の中、尾鍋組の尾鍋社長は糟谷敏秀特許庁長官から表彰状を授与された。

エコジオ工法は、特許技術の掘削機「EGケーシング」で壁面崩壊を防ぎながら地面に穴を掘り、そこに砕石を埋め込む地盤改良技術だ。砕石を使う液状化対策工法は以前からビルや土木工事に採用されているが、エコジオ工法は、主に住宅の地盤補強工法として開発した。

多くの歴史的建造物にも使われているように、自然石はほとんど劣化することなく、強さを保ち続ける。セメントや鉄製の杭(くい)を使う他工法では、地中埋設物や土壌汚染で地価を下げる懸念もあるが、「エコジオ工法は土地の価値を守ることができる」(尾鍋社長)のが施主にとって大きなメリット。「EGケーシング」は土をかき出すためのスクリューがない無排土型を主に使う。

EGケーシングと施工管理ソフトは三重大と共同開発し、いずれも特許を取得済み。さらに地盤改良工事の施工記録を暗号化して管理する仕組みを構築。全国の施工代理店に安定した品質の地盤改良工事を提供することができた。

特許の取得・管理については国および県の支援機関や技術移転機関「三重ティーエルオー」(津市)から支援を受けた。2010年には施工代理店や三重大と連携してエコジオ工法協会を設立。特許技術の使用権利の対価としての加盟金と、施工量に応じて発生する特許使用料を主な収益とする新しいビジネスモデルを確立した。

公共工事にも

特許技術を活用したエコジオ工法は、日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得。さらに、国土交通省が運用する新技術情報提供システム(NETIS)へも登録済みのため、公共工事でも活用可能となっている。

尾鍋組は、従業員14人の中小企業。生業の公共土木工事が頭打ちとなる中、自社の年商を超える費用をかけエコジオ工法を開発したのが転機となった。施工実績は右肩上がりで増えているが、「シェアはまだ全住宅着工件数の2%」(尾鍋社長)と満足していない。

「支援してくれる多くの人との奇跡的な出会いがあってここまで来られた。持続可能な社会を実現する環境にやさしい工法があることをより多くの人に知ってもらいたい」(同)と情報発信に力を入れる。

日刊工業新聞2021年6月21日

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特許

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