人の評価とAIを組み合わせて最適な商品を導き出す仕組み
ビネット&クラリティ(横浜市神奈川区、安田翔也社長)は、味など人が感覚でする評価、選択に人工知能(AI)技術を活用する。「おいしい食品」「売れやすいパッケージデザイン」など、各場面で最適な選択ができる仕組みを作り出す。安田社長は「AIの1種である『遺伝的アルゴリズム(GA)』と人間の選択を組み合わせる。人間の好みを介在させることで、プログラムにはできない官能評価ができる」と胸を張る。
同社は膨大な選択肢の組み合わせから最も良い組み合わせを導き出せるような仕組みを作る「最適化」を事業として展開している。GAを活用することで、迅速かつ低コストで最適解にたどり着けるようにするという。
効果を実証
また人間が思いつかない組み合わせを探索できるのも、GAの大きな特徴だ。ドレッシングのレシピ開発でその効果を実証した。
37種類の材料をランダムに組み合わせ、100種類のドレッシングを作成。人間がベスト10を決定後、GAでこの10種類を組み合わせ、新たに80種類のドレッシングを作る。
さらにベスト10を決め、GAで60種類の組み合わせを決定。人間がベスト3を選び出し、おいしいドレッシングの原型を作った。
GAはランダムに材料を選び出し、組み合わせに突然変異を起こす。人間には思いつかない組み合わせも比較検討できたという。
安田社長は「官能評価する人を家族に限定すれば、その家族にとって最適な味を導き出せる。例えばパッケージデザインで同じ手法を使えば、20―30代女性に人気のデザインを見つけ出すことが可能だ」と解説する。
感性を見える化
また同社は深層学習の活用も進める。ファッションの感性分析ができるAI「Nadera」を開発した。定量的な指標がなく計算機で扱うことが難しいとされる「感性」を見える化する。
Naderaには服における「エレガント」「ロマンチック」などの評価軸を学習させてある。ファッション画像を読み込ませると、背景を取り除き、各要素を分析する。グラフ化した結果を表示する。服のデザインイメージが数値化され、コーディネートやデザイン生成などに役立つ。
画像分析用途で使われることが多いAIだが、“感覚を数値化する”という一歩先の使われ方が増えつつある。安田社長は「世の中には見えにくい感性がたくさんある。知見を活用する領域を広げたい」と意気込む。挑戦は始まったばかりだ。(門脇花梨)