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食品加工メーカーが独自に挑む「モーダルシフト」の道筋

食品加工メーカーが独自に挑む「モーダルシフト」の道筋

キユーピーの冷蔵コンテナを活用して輸送(手前のトラック)

食品加工メーカーがモーダルシフトに挑んでいる。脱炭素社会の潮流や物流業界の高齢化、人材不足に伴い、長距離のトラック輸送を見直し、鉄道輸送への移行でドライバーの働き方改革を後押しする。輸送時の二酸化炭素(CO2)排出量削減にも貢献する。一般的にチルド商品は鉄道輸送が難しいとされる。これらをメーンで扱う食品加工事業者が、独自の努力でモーダルシフトを推し進めている。(大阪・池知恵)

伊藤ハム米久ホールディングス(HD)は、2022年度をめどに関西―東北間の輸送量約1583トン分をトラック輸送から鉄道輸送に切り替える方針だ。輸送時間は従来の2日間から1日半に短縮されるという。竹内大介物流統括部部長は「比較的生産計画に余裕があるレトルト商品と冷蔵・冷凍食品であれば、鉄道輸送が可能と考えた」と話す。

鉄道輸送には常温コンテナと比較してまだ数少ない冷蔵・冷凍コンテナの確保が重要となる。そこで18年にはキユーピーと伊藤ハム米久HDが共同で、九州―関東間の共同配送を始めた。キユーピーが保有する冷凍コンテナを活用し、同社が九州向けの輸送、伊藤ハム米久HDが関東への輸送でそれぞれ活用する体制を構築した。CO2排出量は年間で約45トンの削減効果があった。「冷凍コンテナが増えれば物量はさらに増やせる」(竹内部長)と期待を寄せる。

食品加工各社が鉄道輸送に取り組むのは、比較的消費期限が長いレトルト商品や冷凍食品では生産計画が立てやすいことも背景にある。一方、チルド商品は賞味期限が短い上に季節や天候でその日の出荷数が左右されるため、長期的な生産計画が立てづらい。丸大食品では「決まった時間に決まった量を定期的に配送する鉄道輸送への切り替えが難しい」(環境保全推進室)と説明する。

冷蔵コンテナに積み入れ

それでも同社は、関西向けに唐津工場(佐賀県唐津市)で製造されるハム、ウインナー、ベーコンと、チルド商品の鉄道輸送に挑戦する。「大口発注が確定するかや、その数量、いつ納品になるのかが決定するタイミングが重要」(同)とし、受注予測の精度向上により生産計画の安定化に向けた取り組みを進める。

ただ、鉄道輸送は深夜の輸送がメーンである上に、冷蔵・冷凍コンテナの数が限られているため、同社では「一定の輸送量を確保しなければ鉄道輸送のコスト面で採算が合わないことも課題だ」(同)と指摘する。

モーダルシフトを進める中で、インフラ整備などの政府支援や、物量を確保するための共同配送の推進が今後求められる。

日刊工業新聞2021年7月27日

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