京大が大阪・中之島で再生医療加速。「患者さんのために」の具現化とは?

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「未来医療国際拠点」の建設予定地(左は阪大中之島センター、右は大阪中之島美術館、奥は関西電力本店)

京都大学iPS細胞研究財団(京都市左京区)が大阪市北区に2025年、再生医療で使うiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究・製造施設を設ける。同財団による「my iPSプロジェクト」の一環で新医療拠点の核となる支援機関、未来医療推進機構(大阪市北区)と契約。同地は大阪大学医学部・付属病院があった場所で現在も関連施設がある。京大、阪大という関西の大学の盟友同士による連携も見込まれるため、再生医療加速につながりそうだ。(編集委員・林武志)

大阪・中之島で24年春、延べ床面積約5万7000平方メートルの「未来医療国際拠点」の開設が予定されている。再生医療を軸に人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などを活用し、産学官連携で最先端の“未来医療”を産業化して推進する。

京大iPS細胞研究財団は20年4月、京大iPS細胞研究所(CiRA)から分離して発足した。中之島の新拠点では、患者自身の血液からiPS細胞を作成する。現状で1人当たり数千万円必要な費用を100万円程度に抑えることを目指す。中之島を選んだ理由として同財団は、再生医療を筆頭に今後の医療技術をけん引する組織や機関が集うことなどを挙げる。

京大の取り組みを企業も後押しする。日立造船は京大に細胞培養室向けとなる電子線滅菌技術を活用した滅菌装置のプロトタイプを20年に納入した。同社の機械・インフラ事業本部システム機械ビジネスユニット長の島村真二執行役員は「同プロジェクトの成功に向けて当社も貢献していきたい」と意気込む。再生医療を機械などで支援する企業にとっても、再生医療ビジネスの活性化につながる。

阪大は1993年まで中之島に医学部などを置いていた。今も産学連携拠点の中之島センターが残る。未来医療国際拠点では今後、阪大の活用も見込まれる。たんぱく質結晶化受託の阪大発ベンチャー、創晶(大阪府吹田市)の安達宏昭社長は京大の中之島進出に「初めて聞いたときは正直驚いた」と話す。ただ自身も阪大出身で阪大院薬学研究科特任教授を務めるだけに「阪大関係者としても中之島に新拠点ができることは嬉しい。これを機にiPS関係だけでなくライフサイエンス研究全般の進展を期待したい」と同じ屋根の下で切磋琢磨(せっさたくま)できる環境を望む。

iPS細胞の生みの親で、同財団の理事長を務める山中伸弥京大教授がノーベル生理学医学賞を受賞してから来年で10年。京大による大阪での奮闘は、山中教授が常々強調する「患者さんのために」の具現化に結びつく。

日刊工業新聞2021年7月21日

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