清水建設が開発。世界初のトンネル構築システムがスゴイ
清水建設は人工知能(AI)を活用することで、シールドマシンによるトンネル工事の掘進計画の策定から施工操作までの作業を自動化した。建設業界では少子高齢化に伴い、熟練技能労働者の大量離職が予想されている。最先端技術と定量化した熟練工の経験知を融合し省人化を図りながら、品質確保や技術の伝承を目指す。
世界で初
シールド工法は、トンネルサイズに合わせ大型機械で削り進む工法。道路・鉄道工事などで採用されている。先端のシールド掘削機を回転させながら複数のジャッキを押し出し掘り進み、後方にセグメント(リング状のコンクリート壁面)を連続的に構築していく。
清水建設が開発した次世代型トンネル構築システム「シミズ・シールドAI」は、AIの支援によりシールド掘進の計画策定から操作までを自動化・無人化した世界で初めての技術。今秋、関西の雨水放水路シールド工事で初めて適用する。
計画支援では、シールド工事着工前に技術者が計画する掘進シミュレーションをAIが行う。名古屋工業大学と共同開発した同技術は、測量データを基にAIがトンネル線形に応じたシールド機操作の計画値、セグメントの配置計画を導き、シールドマシンの運転方法と複数のセグメントの割り付けを事前にシミュレーションし計画値を設定する。
10分で処理
重要なのが曲線部の計画策定。人の手では難しく本機の破損にもつながるシールドマシンと地山やセグメントの隙間(クリアランス)に関する計画策定もAI活用で実現した。70のセグメントを割り付けた場合、熟練技能者では約2日間を要するが、AIは約10分で3次元(3D)モデルとして可視化した形で処理する。開発リーダーの関西支店工事長の増田湖一(ひろいち)氏は「AIは教えないことはやらない。我々がしっかりしたストーリーを持たなければならない。シールドの膨大なデータから何を条件にすればよいのか、間違えると期待する答えが出てこない点に留意した」という。
無人施工が可能
施工操作支援では、AIがジャッキの選択を行い無人施工が可能になった。熟練工の経験値を定量化したデータを基にシールド機の操作を補助し、自動運転で掘進する。人はモニターで監視するだけ。開発の責任者は「生産性向上が喫緊の課題。自動化をしたシールド工法を全ての工事で展開したい」(土木技術本部シールド統括部シールド技術グループ長の青山哲也氏)という。今後は複数現場を遠隔監視するシステムを構築し鉄道用トンネルの需要が高まるアジア地域での受注拡大を目指す。(編集委員・山下哲二)