地盤変位を高精度で検出。清水建設のGNSS無人観測システムがスゴい
清水建設は全球測位衛星システム(GNSS)による構造物頂部・側面、のり面(人工的な斜面)の地盤変位を高精度・低コストで検出する無人観測システムを開発した。市販のアンテナや受信機、解析装置に、新たに東京海洋大学と開発した信号受信技術のアルゴリズムにより、上空に障害物がある狭い環境でも計測精度約1センチメートルの高精度でリアルタイムな計測を可能にした。設置費も1セット当たり40万―60万円と低コストを実現。2022年度にも商品化し、建設現場で幅広く活用する。
上空には各国が打ち上げた多数の測位衛星があり、地上のアンテナが複数の衛星からの信号を受信し位置情報を割り出している。この情報は、船舶の位置や自動車やスマートフォンのナビゲーションシステムなどで活用が広がっている。
今回、清水建設が開発したシステムは、東京海洋大学と開発したRTK―GNSS測位アルゴリズムの採用で、交信中の衛星が入れ替わっても途切れることなく計測できるようになり、衛星の種類を問わず4機だけの交信で高精度の測位を実現した。
このアルゴリズムは国内外の測位衛星が発信する異なる周波数の信号を、同一の衛星からの信号と見なして処理できるため、上空の測位衛星が見えなくなっても瞬時に次の衛星を解析することで継続的な測位が可能になる。このため、ノイズで測位誤差が大きく、観測アンテナ周辺に障害物のある片側に山肌を背負う土木工事現場や、街中の建築工事現場でも活用できる。
一方、アンテナなどハードは信頼性のある市販の汎用品を採用し、現場の設置が簡単でメンテナンスもバッテリーの交換程度と低コストも実現した。
衛星から受信した各位置情報(受信データ)は、中継局を通してクラウドに送られた上で現場担当者に通知しデータベースにも保存する。また事前に事故を防止するため、これまで人が管理していた、のり面施工の地盤変位などを、同システムの中で判断し監理者に警報メールを送信するため、無人での施工管理が可能になり省力化にも貢献する。
同システムが高精度な計測を低コストで実現したことにより、盛り土のり面、補強土壁、土留めの変位計測や車両運行管理、土木の情報通信技術(ICT)自動施工など、正確な位置情報が必要となる幅広い分野で活用できる。
これまでも大規模な土木作業現場ではGNSSによる高精度な測位システムを導入している。ただ上空に障害物がなく、4ペア(8機)以上の同一種の測位衛星から信号を受信する必要があり、安定した継続的な計測が難しい。さらに設置費は1セット当たり数百万円と高額になる。