トヨタが小型HV「アクア」10年ぶり刷新。進化のポイントは?
トヨタ自動車は、小型ハイブリッド車(HV)「アクア」を10年ぶりに全面刷新し、発売した。出力が約2倍の新型電池を初採用したほか、旧型より燃費を20%向上。給電機能も標準装備し「手に届きやすいコンパクトカーで、走りや安心安全など全てを高めた」(新郷和晃コンパクトカーカンパニープレジデント)。次の10年の環境対応も見据え、大衆に受け入れられるHV専用車としての立ち位置を明確にする。
2011年の誕生以来、初の全面改良となる。豊田自動織機と共同開発した高出力の「バイポーラ型ニッケル水素電池」を世界初採用。スムーズな加速に加え、エンジンを使わず電気だけで走行できる範囲を広げた。アクセルを離すと滑らかに減速する機能や電気式四輪駆動(4WD)なども初採用し、ガソリン1リットル当たり35・8キロメートルの高燃費を実現した。
鈴木啓友チーフエンジニア(CE)は「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指すリーディングカンパニーとして、HVのトップランナーがあるべき姿だ」と言い切る。
安全機能も充実させた。周囲の車や歩行者などを検知して自動でブレーキをかけるなどの予防安全パッケージを標準装備したほか、駐車時の全操作を支援する「トヨタチームメイトアドバンストパーク」なども用意した。
小型車「ヤリス」と同じ車台を使っており、トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の岩手工場(岩手県金ケ崎町)で生産する。価格は198万―259万8000円(消費税込み)で、販売目標は月9800台に設定。すでに1万5000台の受注があるという。
アクアは東日本大震災からの東北復興の象徴として位置付けられる重要車種で、これまでに187万台を東北で生産してきた。20年2月に発売されたヤリスを機に車種統合案が浮上したが、「ヤリスがあることでコンセプトを振り切れる部分がある」(鈴木CE)。女性やシニアなど運転が得意でなくても安心して使える国民車として、差別化できると判断した。新郷プレジデントは「新型アクアを一つのシンボルに、東北復興の一翼を担いたい」と力を込める。東北に根付く車種として次の10年を見据え発展を誓う。