トヨタ自動車の財務戦略、10年で「稼ぐ力」が向上した理由とは?

  • 1
  • 6
豊田章男社長

原価改善、損益分岐台数引き下げ

トヨタ自動車はリーマン・ショックの起きた2008年以降、稼ぐ力と財務体質を向上してきた。21年3月期はコロナ禍だったが、09年3月期と比べると売上高は1・5倍の27兆2145億円、自己資本比率は3ポイント増の37・6%、ネット手元資金は5・3倍の8兆円に増やした。

トヨタは財務戦略上で「固定費を含む総原価改善による損益分岐台数の引き下げと、投資余力の創出」を重視する。固定費低減などで販管費比率を引き下げると同時に、粗利率は09年3月期比7・2ポイント増の22・1%に高めた。リーマン時から200万台下げた損益分岐台数は、21年3月期にさらに数十万台減らした。

近健太執行役員は「補給品や中古車事業、ソフトウエアアップデートによる収益獲得など、バリューチェーンの収益向上も含め長期的に引き下げたい」と説明する。

手元資金は有事の際に半年程度を支える資金として、ネットで7兆円程度を確保していく方針だ。

東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「単独決算では借り入れがないなど財務は厚い」と評価しつつ「北米の営業利益率の低さや、安定して毎年3000億円規模の原価低減ができていない点、現預金の有効活用は課題だ」と分析する。

投資は、研究開発費と設備投資額ともに1兆円を目安に置く。中でもCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)をはじめ、次世代分野への投資が増える見通しだ。現状で年間1兆円を投じるCASEやデジタル化の費用を「22年3月期は前期比で2割増やす」(近執行役員)。

ただ杉浦シニアアナリストは「NTTなど未来に向けた『仲間づくり』での相互出資や、次世代実証都市の『ウーブン・シティ』など、次世代に向けた投融資の規模と、どうリターンするかはまだ見えてこない」と指摘する。

製造業だけに一定以上は下げられないものの、次世代投資も含む固定費水準の見通しなども株式市場からは注視されそうだ。

日刊工業新聞2021年6月3日

関連する記事はこちら

特集