トヨタが水素技術深化へ 産学官で広げる「仲間づくりの輪」

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産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA)で、太陽電池モジュール試作品を手に取る、トヨタの前田執行役員(左)

再生エネ研と交流推進、脱炭素へ存在感高める

トヨタ自動車が、水素社会実現に向けネットワークを広げている。中核となり得るのが福島県だ。水素の製造から利用まで実証を進めるほか、3月下旬には前田昌彦執行役員が産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA、福島県郡山市)を訪問し、技術交流を進める意向を明らかにした。産学官で「仲間づくりの輪」を広げ、水素を脱炭素化実現に向けた燃料として着実に根付かせる。(名古屋・政年佐貴恵)

ブォン!と爆音を響かせて走り抜けるレーシングカー。水素エンジンを搭載した小型車「カローラスポーツ」だ。富士耐久24時間レースで走行したこの車には、福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」で作られたグリーン水素が使われた。

トヨタは福島市など福島県の人口30万人の都市を、水素社会の実現に必要なモノや資源などの基準「原単位」を決める場として位置付ける。豊田章男社長は「生活の場でモビリティーや原単位がどうあるべきか、具体的なプロジェクトを通して“実装”試験にもっていきたい」とする。

FH2Rとの連携のほか、いすゞ、日野自動車と設立した新会社では、FH2Rの水素を使い、燃料電池トラックによる物流の実証試験をする予定で準備を進める。

自治体や産業界との基盤構築が着実に進む中、研究機関との協力にも踏み出す。

「思った以上に出口を明確に描いている」。FREAを視察した前田執行役員は、再生エネ分野での協力可能性に手応えを示した。現地では分散電源を安定的に利用するためにパワーコンディショナーなどの機器をシミュレーションで評価できるシステムや、水素を運ぶのに役立つ水素吸蔵合金などを見学。また薄型・軽量化した太陽光発電パネルには「コストと効率が解決できれば実車搭載への期待は大きい」(前田執行役員)と関心を向ける。

「ニーズを知る人がトヨタにいるかもしれない。FREAが想定する出口を何通り我々につなげられるか」(同)と、交流する技術者の数を増やすことなどを検討する。

世界的に脱炭素の流れが加速し水素に対する関心は徐々に高まっている。しかし「選ぶのは客だというポイントは外してはいけない」(同)。水素社会の実現は、実際の生活者に受け入れてもらう土壌を作ることが重要となる。前田執行役員は「社会受容性のハードルは主にコストだが、客に(メリットなどが)『分かりやすい』ことが大切だ」と断言する。

東日本大震災からの復興支援を東北で続けてきたトヨタにとって、福島の水素事業は「復興から成長へのターニングポイントだ」と前田執行役員は話す。水素のさまざまな可能性を示して、脱炭素化の実現手段としての存在感を高める考えだ。

日刊工業新聞2021年6月3日

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