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水中で紫外線に当たるとゲル化する高強度親水性ポリマーの仕組み

北陸先端科学技術大学院大学が開発

北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄教授らは、水中で紫外線(UV)に当たるとゲル化する高強度の親水性ポリマーを開発した。まだ研究段階だが、海で微生物に分解されるプラスチック材料となり得る。同材料は水中でUVを受けるとゲル状になり膨潤する。これにより、微生物がゲルを食べて分解しやすくなる。地上では通常のポリマーとして使われ、海に流出しても自然に還るプラスチックとして期待される。

新ポリマーはヘキサメチレンジアミンとイタコン酸を重合して合成するバイオナイロンに、11アミノウンデカン酸を混ぜることで強度を高める。11アミノウンデカン酸の割合を増やすと、ひずみエネルギー密度が40メガジュール/立方メートル(メガは100万)に増強された。この数値は防弾チョッキ素材に匹敵する。11アミノウンデカン酸を加えないと、同密度は1・2メガジュール/立方メートルにとどまった。

ヘキサメチレンジアミンと11アミノウンデカン酸の比率が1対5の条件では伸長強度が91メガパスカル。生分解性プラスチックは生分解性を高めると強度が出ないため、強度と生分解性の両立が難しかった。新ポリマーは水中でUVを受けると親水化して水分を含んでゲル状に膨潤する。膨潤することで微生物が食べやすくなると考えられる。

海洋分解性プラスチックは海中の微生物活性が低く、地上の分解性プラスチックより高い生分解性が求められる。

強度との両立が難しくなるが、UVをスイッチとしてゲル化によって分解しやすくなると、通常は高強度のポリマーとして使われ、海に流失したら分解性ポリマーとして働くプラスチックになり得る。

日刊工業新聞2021年7月14日

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