漂着プラゴミを“工芸品”に!企業責任の果たし方
日本各地の海岸で年3万―5万トンの漂着ゴミが回収されている。ロープや漁網、容器などのプラスチック製品の漂着物が目立つ。回収しても次々と流れ着くゴミの処分に悩む地域を支援しようと、漂着したプラスチックゴミで製品を作る企業が増えている。どの企業も事業でプラスチックを扱う責任を感じ、製品を通じて消費者にも問題解決を訴える。
処分に悩む地域を支援
濃淡のある色が鮮やかな小皿は陶芸品のようだが、手に取ると軽い。表面に目をこらすと、細かく砕いたプラスチックが材料と分かる。テクノラボ(横浜市神奈川区)が漂着したプラゴミを砕いて再成形した商品だ。
同社は2020年7月、漂着ゴミ由来の商品を「buoy(ブイ)」と名付けて自社ブランドにした。林光邦社長は「百貨店で販売すると陶器にもない色だと評価して購入する人がいる」と手応えを語る。
同社はプラスチック製品を受託製造する。漂着ゴミが問題化すると、林社長は「自分たちが付加価値と思って提案しても顧客は安さを求めていると、うすうす気付いていた。良いモノを作ったつもりでも、ゴミを作っていたのか」と責任を感じた。それならば「捨てられないモノを作ろう」と漂着ゴミを工芸品のように再生するブイを始めた。
材料は長崎県対馬市などに漂着したゴミ。通常、プラゴミはポリエチレンなどの種類別に分けてリサイクルする。同社は種類ではなく、色で分ける。種類による融点の違いが成形時に反映され、同じ色でも濃淡を生む。
種類が混ざった材料の成形は腕の見せどころ。「つぶれた感触や音を聞いて成形する。一品一品に技能をつぎ込むのは工芸品と同じ」と胸を張る。同社は漂着ゴミを新品の材料と同等価格で地域から購入している。「次々とゴミが漂着する現地には徒労感があるはずであり、少しでも還元したい」と語る。
消費者にも啓発
伊藤忠商事も漂着ゴミを原料の一部に使用した商品を提供している。子会社の日本サニパック(東京都渋谷区)とゴミ袋を製作し、海岸清掃に取り組む対馬市などに寄付した。資本参加した米テラサイクルの日本法人と連携し、ファミリーマートの買い物かごも開発した。
伊藤忠は年300万トン以上のプラスチックを取り扱う。世界2位の数量であり、問題に向き合おうと漂着ゴミを製品化した。同社化学品プロジェクト推進室の小林拓矢氏は「ブランドオーナーの要望」も挙げる。環境に配慮した形でプラスチックを使いたい取引先が増えており、提案の一つに漂着ゴミ由来素材を位置付ける。
実際、消費者に環境問題を啓発したい企業からの引き合いが多い。漂着ゴミ由来素材は「取引先や消費者が問題解決に携われる仕組み」(小林氏)。もちろん漂着ゴミがなくなり、仕組み自体が不要となることを望む。
日本環境協会(東京都千代田区)は海洋プラゴミを利用した製品の環境配慮を示す「エコマーク」の認定基準を策定した。エコマークの表示によって消費者への啓発につなげる。
漂着ゴミ由来製品が話題だけで終わらず、社会に企業の思いが伝わってほしい。