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商用車メーカーが組織体制見直し急ぐ。DX加速で新ビジネス狙う

顧客課題解決など、事業の幅広げる

商用車メーカー各社がデジタル変革(DX)を推進するめ、組織体制の見直しを急いでいる。コネクテッドや電動化技術の進展で、新たな機能をトラックに持たせられる。商用車メーカーは顧客の物流事業者に物流課題の解決に向けたサービスなども提供できる。一方、IT関連など新たな知見も必要で、開発の難易度は高まる。商用車ビジネスの幅を広げるためにもDXを加速させて、ハードルを乗り越える構えだ。(日下宗大)

三菱ふそうトラック・バスは7月1日付で電動車向けサービスを統括するチーフ・トランスフォーメーション・オフィサー(CTO)を新設した。電動車両の販売底上げを目指し、研究開発からマーケティングまで一気通貫で社内体制の転換に着手する。

同社は2017年に世界に先駆けて小型電気自動車(EV)トラックを市場投入した実績を持つ。39年までには全製品をEVや燃料電池車(FCV)といった電動車にする目標を掲げる。

電動化を強力に進めるためには、エンジントラックを使い慣れた顧客に対する新しい価値創出が必要だ。例えばEVトラックならではの優れた静粛性、自動運転との高い親和性などが挙げられる。コネクテッド技術により収集した車両データを活用したソリューションビジネスの展開も期待できる。CTOは、新しいビジネスモデルに合わせた社内組織の変革も担う。

日野自動車は20年10月にチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)を新設し、ヤマトホールディングス(HD)やイオンでIT改革担当役員を歴任した小佐野豪績氏が就いた。同年3月にDX推進のため、執行職として日野自に招かれた小佐野氏。IT活用による物流改革のもう一歩先を模索していた時だっただけに「日野自からのオファーは“渡りに船”だった」と振り返る。

下義生会長は人手不足など顧客の物流企業が抱える課題解決には「DXなくしては不可能だ」とし、「小佐野氏に来てもらって、早い時期にCDOを創設した」と話す。

同社は電動化やデータ活用で他社連携を加速している。22年には小型EVトラックの市場投入を控えるなか、顧客に対して電動車両の導入支援を目的に関西電力と共同出資会社を設立した。

スタートアップとも積極的に組み、データを使ったソリューションビジネスを展開できる組織体制の構築を目指す。

日刊工業新聞2021年7月9日

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