サントリーHDなど、障がい者が企業で活躍できる「共生社会」への一手
企業での障がい者雇用のあり方が多様性を増している。3月に民間企業の障がい者の法定雇用率が2・2%から2・3%に引き上げられたこともあり、各社では障がい者雇用の促進に向けた取り組みが加速。障がい者が企業で活躍できる「共生社会」の実現に向けて、一般社員と障がい者が共に働き、相乗効果をもたらす環境づくりが進む。(大阪・池知恵、同・中野恵美子)
サントリーホールディングス(HD)が東京と大阪に設置する「コラボレイティブセンター」。そこでは障がい者と一般社員とが、同社グループの同じオフィスで肩を並べて働く環境づくりに取り組んでいる。コラボレイティブパートナー(CP)と呼ぶ知的障がいのある約26人と、サポート役の社員7人が所属している。
同センターではグループの全国の営業拠点から仕事依頼が次々と舞い込む。それらの仕事の納期や依頼内容を精査した上で、各拠点にCPを派遣する。担当する業務は、主に店頭のPOP(生産時点情報管理)の裁断や、伝票整理、データのPDF化など。依頼を受けた部署からは「共に働くパートナーとして重要な存在」と高い評価を得ている。2015年にスタートした取り組みが、今ではグループ24社から150の業務を引き受けるところまで拡大した。
同センターの住友健史課長は「最初は不安の声もあったが、CPの仕事ぶりを見て今では業務の依頼が頻繁にくる」と話す。この4月に入社したCP社員は「日々新しいことにチャレンジするのでとても楽しい」と笑みを浮かべる。
大日本住友製薬は子会社のココワーク(大阪市中央区)で、農業を通じた精神障がい者の社会復帰を支援している。同社は精神疾患の医薬品開発が強みだが、薬で症状が緩和できても再発リスクが大きく、就労の課題だ。そこで18年7月にココワークを設立。大日本住友の総合研究所(大阪府吹田市)内に水耕栽培施設を整備した。
農業は自然に触れる“癒やし”などの効果をもたらすとされ、統合失調症やうつ病を患う社員6人が、大日本住友からの出向社員らとともに種まきから栽培、出荷までを担う。今後は露地栽培に事業を拡大するなど、地方創生への貢献も目指す。ココワークの渡辺晶子社長は「キャリアアップ制度など、働く意欲を高める仕組みを充実させたい」と見据える。
眼科薬を手がける参天製薬は、企画本部CSR室などに計4人の視覚障がい者を雇用している。社員自身が講師となり、障がいに対する理解を促すプログラム「ブラインドエクスペリエンス」を展開。同社グローバル拠点に加え、他企業向けにも従業員の研修として提供している。
同社によると、日本では点字ブロックなど視覚障がい者に配慮したインフラが整っている一方、障がい者への理解には後れを取っているという。中野正人CSR室長は「視覚障がい者に対する偏見を変えることが課題だ」と力を込める。