痛みを軽減できる「樹脂製注射針」量産へ、微細加工技術を応用
狭山金型製作所(埼玉県入間市、大場治社長)は低侵襲性に優れた樹脂製注射針を開発し、2022年秋に事業化する。先端が丸みを帯びた形状で一般的な金属製注射針と比較し、注射時の痛みを軽減できる。樹脂のみでできており注射後の廃棄処理もしやすい。糖尿病患者のインスリン注射用途を中心に提案する。来春にサンプル出荷を開始し、22年は年間150万本、27年に年間6000万本の供給を目指す。
注射針は「PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)」と呼ばれる強度や耐熱性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックを採用し、射出成形で量産する。PEEKを使った注射針は高度な設計力や射出成形技術が求められ、安定して量産するのは難しく市場投入は世界で珍しい。
注射針のサイズはインスリン注射用金属製製注射針と同等程度の外径0・24ミリメートル、内径0・07ミリメートル。厚みは最薄部で0・08ミリメートル。特許出願済みで医薬品医療機器総合機構(PMDA)の認証取得に向けた準備を進めている。
狭山金型製作所によるとインスリン用注射針の世界市場は年間60億本。糖尿病患者が毎日使用するため、できるだけ痛みの少ない低侵襲性に優れた注射針が求められる。ユーザーが手に取りやすいよう既存の注射針と同等程度のコストに抑え、将来的に同市場でシェア1%以上を目指す。
狭山金型製作所は半導体や自動車などの次世代製品向けに特化した射出成形用金型製造事業を展開する。同事業の設計ノウハウや微細加工技術を樹脂製注射針の開発に応用した。樹脂製注射針についてはメーカーとして事業展開する方針で、大手注射針メーカーとの販売協力を検討する。
今回の新規事業を進めるにあたり知財戦略などで製造業コンサルティングサービスを提供するO2(東京都港区)と連携している。