ファイザー日本法人の研究開発部門が独立したベンチャー、挑戦内容とは?

ラクオリア創薬・谷直樹社長に聞く

 ラクオリア創薬は、米製薬大手ファイザーの日本法人の研究開発部門が独立したベンチャー企業。従来と異なるメカニズムでウイルス感染神経性痛など治療が難しい病の痛みを制御する薬の開発を目指している。谷直樹社長に新薬開発にかける思いなどを聞いた。

 ―痛みの元を抑えるのではなく、疼痛領域の痛みの経路を遮断する薬の開発を目指しています。
 「神経を伝わる痛みの電気信号を止めて脳に届けないことで感じなくする仕組みだ。ただ副作用で不整脈や心臓疾患を引き起こす危険性があるため、副作用の原因物質と分離する必要がある。痛みは全ての病気の出発点で、痛みを制御できれば、患者の精神状態の落ち着きにつながる。痛みを抑えるだけでは、痛みが残る場合もある。病気の進行を止めるのは別の薬の役目で、あくまで痛みをなくすことに主眼を置いている」

 ―副作用をどう抑えるのですか。
 「薬の原料となる化合物の構造や種類によって、遮断できる電気信号が異なる。このため、構造を変えて、心臓などに関連するイオンチャネルには作用せず、神経系の痛みに関わるイオンチャネルの電位差をなくして信号が伝わらないようにする。効果が出やすい化合物や副作用が出やすい化合物のノウハウが蓄積でき、おぼろげながら形が見えてきている」

 ―新薬開発の進捗(しんちょく)は。
 「糖尿病神経性痛薬とヘルペスウイルス感染神経性痛薬では、旭化成ファーマにライセンス供与しており、現在は長期の毒性試験と工業的合成手法の確立に向けた試験を並行して行っている。あと1年で人間への臨床試験に入る見込みだ」

 ―時間がかかるため大手製薬メーカーは苦戦しています。
 「大手は研究開発方針の変更がある上、早期の結果が求められる。ベンチャー企業はこだわりを持って開発できる」

 ―市場性をどうみていますか。
 「従来の薬では治療が難しい痛みが対象になるので、ニーズは強い。市場投入できれば差別化できる。例えば、末期がんに使われるモルヒネは、意識混濁や便秘などを引き起こす場合もあり、使いづらいのが難点だ。これらの問題を解決できる薬として市場開拓できる」
ラクオリア創薬社長・谷直樹氏

日刊工業新聞2018年5月22日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
05月22日
この記事のファシリテーター

電気信号遮断により痛みをとる薬の開発は、大手製薬会社でも苦労してきた難関だ。命に関わりかねない副作用もあり、それをなくす手法の確立には高度な技術が必要となる。それでも、谷直樹社長は「信念を持った研究員がいる」と粘り強く挑む。痛みを遮断し患者の負担を軽減できるだけに、世間からの期待も大きい。いかに早く市場投入できるか。ラクオリア創薬は飛躍がかかる踊り場に差しかかっているといっても過言ではない。
(日刊工業新聞社名古屋支社・市川哲寛)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

PRmore

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。