半導体製造の消費電力10分の1に。大日印・キオクシア・キヤノンが開発する「NIL」とは?
大日本印刷は、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)、キヤノンと共同で開発を進める「ナノインプリントリソグラフィ(NIL)」での半導体製造が極端紫外線(EUV)露光と比べ消費電力を10分の1に抑制できることを明らかにした。NILは量産利用までに課題が多いものの、最先端の回路線幅が形成できている。産業界における脱炭素機運の高まりを背景に、3社は消費電力削減で差別化しつつ、実用化に向けて開発を促進する方針だ。
NILは型をウエハーに押しつけて微細な回路パターンを形成する。大日本印刷によれば、NILは技術開発用で回路線幅5ナノメートル(ナノは10億分の1)ノードまで対応可能という。実際の量産投入には回路欠陥の発生など解消すべき課題も多く、3社は量産技術の確立を目指している。
NILはシンプルな製造プロセスでEUV露光のように大電力を消費することもない。大日本印刷は装置の仕様値による内部シミュレーションを2021年春に実施。回路形成工程における1ウエハー当たり消費電力をEUV露光使用時と比較して10分の1程度にできることが分かった。
生産活動に対して温暖化ガス排出量削減が求められる中、脱炭素社会実現に向けて、半導体製造におけるNILの必要性が高まると見ている。製造工程における消費電力の削減に取り組む半導体メーカーやユーザーに訴求していく。
キオクシアの主力製品であるNAND型フラッシュメモリーの技術開発は積層化(3D化)が現在の主流で、微細化はロジック半導体のようには進んでいない。データを出し入れする周辺回路の微細化はNANDの中長期的なテーマ。キオクシアはすでに15ナノメートルまでの量産技術を確立済み。微細化に備えてEUV露光やNILの研究開発を行っている。
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日刊工業新聞2021年6月25日