好調のリチウム電池用バッテリーパウチ製造、大日本印刷がラインを拡大
“第三の創業”を掲げて事業構造や制度の改革を進めてきた大日本印刷。新型コロナウイルス感染拡大やデジタル化の加速といた急激な社会変化は、同社が描く成長路線に何をもたらすのか。北島義斉社長に聞いた。
―感染再拡大でどのような影響が生じると想定されますか。
「出版物や業務用包材などは再び影響があるだろう。写真印刷についても同様だが、コスト削減など状況に応じた対策を進めた。全体では2020年4―9月期ほどの大きな影響には至らないとみている」
―リチウムイオン二次電池用バッテリーパウチは対照的に需要が高まっています。
「巣ごもり需要の影響で供給量が増えた。また、第5世代通信(5G)の基地局内に蓄電池を置くという話もあると聞く。この分野の伸びも拡大につながるだろう。現時点で受注がかなり多く、製造体制は拡大する。鶴瀬工場(埼玉県三芳町)でラインを構築中だが、さらに1ライン増やす。すぐ足りなくなるだろうから、他の拠点でも検討する」
―21年度をどのように見通しますか。
「引き続き感染状況が物事を左右する。コロナ禍に左右されないポートフォリオの構築に取り組んできたので、事業の組み替えをさらに進めていく」
―中期経営計画が2年目に入ります。内容に変更はありますか。
「コロナ禍の影響を踏まえた見直しは実施しているが、24年度に営業利益750億円を掲げる方針は変わらない。(中計中に)毎年1000億円前後とした投資規模も同様だが、配分先は状況に応じて変わるだろう。成長領域である「住まいとモビリティー」など4分野の事業をさらに強化することも変わらない」
―環境問題への対応が各所で加速しています。事業への影響は。
「環境に配慮したパッケージの開発など早い段階から取り組んで来た。今後もニーズに合い、付加価値の高い製品を提供していく。環境負荷低減の流れはなるべく追い風にできるように取り組まなければならない。関連する研究・開発や製造も力を入れていきたい」
―社会が急激に変わる中で、今後の大日印には何が求められると考えますか。
「強みである“P&I(印刷技術と情報技術)”とは表現力と大量の情報を処理する力。これらを駆使し、変わりゆく生活の中で楽しみや価値を感じられる技術を提供していくことが使命だと思う」
記者の目/社内のハード整備が必要
コロナ禍によるデジタル化の加速は新たな価値の創出にもプラスに働く。オンライン開催の社内向け技術発表会は従来以上の従業員が参加し、活発な意見交換やアイデア収集をしやすくなった。距離に縛られない連携を深めるには、ハード側のさらなる整備が欠かせない。(国広伽奈子)