実質無借金経営の日東電工。“全包囲網”でM&Aに臨む

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日東電工が2018年度からの業績下降を克服し、財務の強さを保っている。テレワークの拡大を背景にノートパソコン用光学フィルムなどの需要が回復し、20年度は自己資本比率74・1%と高水準を維持した。次の成長に向け、偏光板など利益率に優れる高シェア製品で積み上げてきた潤沢な資金を有効に回せるのか。的確な投資の目利き力があらためて問われる。

高崎秀雄社長は「OLED(有機EL)用偏光板には20年秋から対応し、(スマートフォン用部材の)高精度基板事業など新しい取り組みも21年度にかけて利益に貢献する」と反転攻勢を意気込む。

同社はスマホのディスプレーが液晶からOLEDに移行し始めた影響で「供給する部材が大きく変わり業績も一時かなり苦戦した」(高崎社長)。20年度は株主資本利益率(ROE)を10・0%と3年ぶりに10%台へ戻したが、売上高1兆円(20年度は7613億円)とする中期経営計画は仕切り直しとなった。

利益率の高い上級クラスのスマホ市場もコロナ禍で冷え込む。大型のM&A(合併・買収)にでも踏み切らない限り、1兆円企業への仲間入りは容易でない。

実質的には無借金経営で、現金および現金同等物は3008億円。成長の持続に必要な技術や製品が常に移り変わるため、豊富なキャッシュは研究開発と設備投資を最優先に充ててきた。競争力の強いフィルムや高精度基板などの次世代スマホ向け部材、核酸医薬などに先行投資し、21年度から同基板の本格量産や核酸の生産増量へ前進する。成長のポートフォリオに変えていく。自社株買いも主な使途とし、配当性向40%超という高額配当とともに株主還元に努める。

焦点のM&Aでは対象を電機と医療を含め「全包囲網」(同)で臨み、技術、特許、販路、ブランドなど高い価値を取り込む。21年度も自己資本比率75・2%を目標に掲げるなど、この先も手堅い経営を維持すると見られるが、思い切ったM&Aになれば、自慢の財務とてんびんにかける難しい判断も求められそうだ。

日刊工業新聞2021年5月20日

キーワード
財務分析 日東電工

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