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「水素還元製鉄」開発を後押し。経産省が脱炭素へ2兆円基金活用

「水素還元製鉄」開発を後押し。経産省が脱炭素へ2兆円基金活用

日本製鉄が主導するCOURSE50の試験高炉(千葉県君津市)

経済産業省は2050年の脱炭素に向け、水素を還元に使う製鉄会社の技術開発を支援する。外部の水素を用いて当面、二酸化炭素(CO2)の50%削減を目指す技術、製鉄所内で発生する水素を使った25年度までの大規模実証などを想定し、約2兆円の研究開発基金「グリーンイノベーション基金」などを活用する。今秋には基金の支援案件が公募され、鉄鋼業界は複数の関連技術を提案する見込み。ただ現状はどの技術が優位か判断できず、多額の開発資金が必要とされる中、基金の配分が注目される。

国のグリーン成長戦略で、鉄鋼業は石炭の代替で水素を還元に使う製鉄技術の開発が必要とした。鉄鋼業界のCO2排出量は国内産業の排出量全体の約4割を占め、中国勢などとの競争もあり技術開発が急務となっている。

基金の公募で、日本製鉄などが外部の水素でCO2を減らす「スーパーコース50」、JFEスチールが高炉排ガス中のCO2を水素と反応させメタン化し還元に使う「カーボンリサイクル」を提案する見通しだ。基金では従来の単年度予算と違って、10年間安定した支援が可能。支援は委託または補助となる。

これに先立ち、神戸製鋼所を含む3社は製鉄所で発生した水素を使う国家プロジェクト「コース50」を10年超進めている。基金でこれも継承し、25年度までの大規模実証、その後の導入を支援するとみられる。CO2の分離・回収を含めて排出量の30%削減を図る。

鉄鋼各社はこのほか直接還元鉄の投入や電炉の大型化などを計画するが、大本命である100%水素還元製鉄の実現までの移行期の手段。共通の技術課題は、水素の吸熱反応で奪われる熱の補償、鉄スクラップに含まれる不純物の除去など少なくなく、これらの解決に基金は充てられる見通し。国の支援では水素の安価・大量調達への対応も欠かせない。

ただ、どの技術が有望かは官民とも決め打ちできないのが実情だ。経済産業省製造産業局金属課は「各メーカーと同様、複線的アプローチを進めていかざるを得ない」との認識を示す。脱炭素の研究開発だけで日本製鉄は5000億円以上、JFEスチールは30年度までに約1000億円かかると試算。企業は国の支援を求めるが基金にも限度がある。業界各社は公募に向けて提案内容をギリギリまで調整する考えだ。

日刊工業新聞2021年6月16日

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