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60歳以上の再雇用社員は副業・兼業を解禁、大日本住友製薬の狙い

大日本住友製薬は4月、60歳以上の再雇用社員を対象に副業・兼業を解禁した。専門性を社内外で発揮する機会をつくり、働く意欲や能力の向上を後押しする。現役世代が定年後のキャリア形成に対する意識を高め、長期的な定着につなげる狙いもある。将来的には全従業員約3000人への適用を検討している。

副業・兼業制度により、専門知識をビジネスとして自由に生かすことができる。シニア従業員が社外で活躍の幅を広げることで、定年後のキャリア開発や自己研鑽(けんさん)を促す。副業の仕事内容や労働時間、健康状態などについては定期的に面談し、労務管理に役立てる。

社内には医師や薬剤師、キャリアコンサルタントなどの資格を有する従業員が在籍している。これまで個人が大学などから講師の依頼を受けることがあったが、業務の一環に位置付けられ、無償で活動していた。副業・兼業解禁により、すでに数人のシニア人材が他社でコンサルティング業務などを行っている。

同社は新型コロナウイルス感染症を受け、在宅勤務を拡大した。通勤時間の有効活用が図られる。副業・兼業は全従業員への拡大も視野に入れている。樋口敦子執行役員は「外からの学びを社内の業務に生かしてほしい」と説く。

近年は人事制度の刷新に取り組んできた。個人の素養に応じて高度な専門性や組織運営力を発揮し、成果を創出する仕組みを運用。1月にはキャリア支援窓口「セルフ・キャリアドック」を始めた。人事部門に所属するキャリアコンサルタントとの面談を予約できる。従来は40―50代を対象にキャリア相談を実施していたが、20代の若手を含む幅広い年齢層に開放した。

樋口執行役員は「能力を最大限に発揮するための環境を充実させたい」と話す。副業・兼業を含めた多様な働き方を推進して個人の成長を促し、全体の生産性向上につなげる。

日刊工業新聞2021年5月4日

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