抗がん剤「ナパブカシン」臨床試験中止で大誤算、大日本住友製薬の収益源は?

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進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」

大日本住友製薬は開発中の抗がん剤「ナパブカシン」の臨床試験を全て中止する。結腸直腸がんを対象とした第3相臨床試験に失敗したことを受け、固形がんや肝細胞がんなどを対象とした第1・第2相臨床試験の中止を決めた。同剤はピーク時の売上高で1000億円規模を見込む大型薬(ブロックバスター)として期待が高かっただけに、収益の柱となる候補薬の育成が急務だ。(大阪・中野恵美子)

グローバルに創薬開発へ

大日本住友は現在、非定型抗精神病薬「ラツーダ」を主力品に据える。ラツーダの2021年3月期売上高は主力の米国で1990億円となる見通しで、同社全体の4割に当たる。だがラツーダは23年2月に米国での特許切れを迎え、大部分の収益がはく落する見通しだ。同社はナパブカシンでラツーダの収益を補う計画だっただけに、今回の開発中止は大きな誤算だ。

その中でポスト・ラツーダの切り札として期待されるのが、19年10月に資本提携した創薬ベンチャーのロイバント・サイエンシズ(英・スイス)だ。ロイバントは人工知能(AI)やデジタルを駆使した医薬品開発に強い。他社の開示情報を分析し、優先度が低下している有望な開発品を比較的安価に自社へ導入する戦略を取り、設立から数年で大型候補薬をそろえた。

大日本住友が傘下に置いた米マイオバント・サイエンシズは1月、進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」(一般名・レルゴリクス)を米国で発売。同剤は子宮筋腫や子宮内膜症向けにも開発を進める。20年12月には、米製薬大手ファイザーと北米におけるがんと婦人科領域の共同開発・共同販売で提携した。契約一時金と事業段階に応じ、大日本住友はファイザーから最大で42億ドル(約4350億円)を受け取る契約だ。

同じく米子会社のユーロバント・サイエンシズは泌尿器科疾患の治療法を開発する。3月には、過活動膀胱(OAB)を対象とした「ジェムテサ」(一般名・ビベグロン)を米国で発売。レルゴリクスと合わせて、大型薬に育成する方針だ。大日本住友の野村博社長は「ロイバントとの提携を検討していた段階の想定と同等か、それ以上の進捗(しんちょく)となっている」と手応えを語る。

ロイバントとの資本提携で一定の結果は出ているが、新薬候補を継続して生みだすことも欠かせない。大日本住友はがんを重点領域に掲げる。野村社長は「日本で2人に1人が罹患(りかん)する、未充足の医療ニーズが高い疾患だ」と意義を説く。がん創薬からは以前撤退した経緯があるが、研究開発の推進は欠かせない。

現在、がんペプチドワクチン候補をはじめグローバルに複数の開発品目をそろえている。産みの苦しみのさなかにあるがん創薬をうまく軌道に乗せられるかが、今後の競争力を左右しそうだ。

日刊工業新聞2021年3月23日

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