「アルテミス計画」達成へ、注目集めるNASAの探査車
ヘリで地表撮影、実証進む
米国主導の国際宇宙探査計画「アルテミス計画」の達成に向け、月・火星への探査が進んでいる。特に、2月に火星に着陸した米航空宇宙局(NASA)のローバー(探査車)「パーサビアランス」の活躍が注目されている。同機はかつて湖だったと考えられている地点に着陸。火星の地表の撮影や実証実験を進めている。探査は約2年行われる予定で、火星に生命が存在した証拠の発見を目指す。
これまでも火星探査機による調査は行われてきたが、火星が生命にとって生存可能な環境かを調べることが目的だった。だがパーサビアランスでは、微生物や生命の痕跡を見つけることが目的。ドリルで火星の岩石の試料を採取して、地球に持ち帰って調べる。
同機にはヘリコプター「インジェニュイティ」を搭載しており、飛行実験が進められている。地球より大気が薄い状況で飛行技術の習得を目指す。これまでに6回の飛行実験に成功。地球以外の惑星での動力飛行は初めて。5回目の飛行では高度約10メートルまで上昇し約129メートルの距離を約80秒間飛行した。4回目の飛行では、飛行音を録音することにも成功した。
NASAのスティーブ・ユルチク氏は「将来的に火星を有人探査できるようになれば、宇宙飛行士が降り立つ前に事前探査するという使い方ができる」と強調する。
探査以外にもパーサビアランスに搭載した実験装置で火星の大気から酸素を作る実験に成功した。火星の大気はほぼ二酸化炭素(CO2)であり、約800度Cの熱で一酸化炭素(CO)と酸素(O2)に分解した。3時間の実験で宇宙飛行士1人が10分間呼吸するのに必要な量である約5・4グラムを生成できた。将来有人探査や移住などにつながる。
日本では2024年に探査機の打ち上げを目指す「火星衛星探査計画(MMX)」の準備が進んでいる。火星本体ではなく火星衛星「フォボス」を目的地として、火星とその衛星の起源の解明を目指す。小惑星探査機「初代はやぶさ」と「はやぶさ2」が達成した地球圏外の惑星との往復航行と探査、サンプルリターン技術を生かす。
JAXAの川勝康弘MMXプロジェクトマネージャは「MMXでは10グラム以上試料を採取することを目指す」と意気込む。
国際的に見ても、ロシアやインドの火星探査機が活躍しており、20年にはアラブ首長国連邦(UAE)や中国が探査機を打ち上げた。各国の惑星探査が増える中で、火星での競争は激しく今後も目が離せない。