炭素繊維メーカーが宇宙・空を狙う。月面探査車に部材供給も

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三菱ケミカルは月面探査車の格納庫でCFRP複合材料を手がける(プロジェクトの月面探査車)

炭素繊維メーカー各社が宇宙、飛行ロボット(ドローン)向けで炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の用途開発に力を注ぐ。三菱ケミカルは月面探査車向けに部材を供給し、帝人はドローン向け水素圧力容器に使う。東レは宇宙・ドローン関連で開発の引き合いが増えている。軽くて強い炭素繊維の特性と長年培った各社ノウハウを生かし、用途拡大につなげる。(村上授)

三菱ケミカルは民間として初の月面探査を目指すダイモン(東京都大田区)とパートナーシップを結んだ。同社はロボット・宇宙ベンチャーで探査車を2021年秋に打ち上げる。CFRPを探査車格納庫に使う。

【刺激でやる気】

重量があると輸送コストがかかる。部品軽量化の打診を受け、21年に参画した。90年代から宇宙分野に部品を供給してきたが、国家プロジェクトなら数年スパンのところ今回は打ち上げまで1年以内。部品改良の決断も速く従来にない刺激が社員のやる気を促す。

月は火星に比べ大気がなく気温変化も大きい過酷な環境。CFRPが長時間使用できれば「非常に意義がある」(プロジェクト担当の中越明氏)と、実績を積み重ねる構えだ。

帝人子会社の帝人エンジニアリング(大阪市西区)は、CFRPとアルミニウムを組み合わせた、燃料電池で動くドローン向け水素タンクを開発した。同社は20年以上、消防士らが背負う酸素ボンベや、燃料電池車の水素圧力容器を作るがドローン向けは初めて。

【重さ3分の1】

アルミだと重さ約10キログラムだが、CFRP併用なら3分の1にできる。航続時間も従来充電の約30分から1時間半―2時間弱に広がる。23年3月までに販売する考え。国の指針では、一定の高さから落下に耐える構造が容器に求められるため、圧力容器をプロテクターで保護する。担当者の志村英治第二事業部門長は「プロテクターをどれだけ軽く安く作れるかが普及のカギ」と話す。

東レ子会社の東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)は、航空機や自動車の炭素繊維複合材料を手がける。コロナ禍で航空機需要が激減、車向けも開発は減ったが、民間宇宙ビジネスやドローンビジネス向けで需要が増え、直近半年間のうち全体の25%がエアモビリティー分野だ。「軽量化の要因が大きい」と奥明栄社長はみる。

【遅れ許されず】

同社はレーシングカー部品も作るが、大会日が決まっているため進捗の遅れは許されない。その部分はエアモビリティー分野と近い。期日に間に合わせる技術力や、レース車開発で培った設計技術も駆使し、取引先のモノづくりを支える。

各社用途拡大ができるのも展示会や大学との連携と、伝える活動があってのこと。さらなる展開には外部に技術や強みを発信する機会の創出が不可欠だ。

日刊工業新聞2021年6月1日

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