ペリクルって一体なに?半導体回路の微細化に欠かせない「EUV露光」技術

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写真はイメージ

半導体回路の微細化に欠かせない「極端紫外線(EUV)露光」への期待感が高まっている。EUV露光装置を手がける蘭ASMLが、露光工程の歩留まり低下を防止する「ペリクル(防塵カバー)」を量産用途のEUV向けで初めて開発した。これを受け、半導体メーカーがEUV露光の適用レイヤー(層)数を増やし、露光装置の導入を拡大する公算が大きい。EUV露光の拡大は検査装置など周辺装置メーカーにとってもプラスで関連市場全体の成長につながりそうだ。(張谷京子)

ペリクルはフォトマスク(半導体回路の原版)の表面に装着する薄い保護膜。傷やホコリを付きにくくし、フォトマスクの検査・交換頻度を抑制する。露光工程の生産性向上には欠かせない。これまでフッ化アルゴン(ArF)液浸など旧来型の露光向けでは使用されているものの、より高い透過率が求められるEUV露光向けでは実用化に至っていなかった。

ペリクルは、光の透過率を上げると、物理強度が低下するトレードオフの関係にある。双方の両立が課題だった。ASMLは双方を両立したEUVペリクルを開発。自社の試験ラインで生産し、少なくとも半導体メーカー1社の一部ラインで使用されたもようだ。

ただ、ASMLは開発のみで、量産はペリクルの生産ノウハウが豊富な三井化学に任せる。奥山岳男機能性ポリマー事業部長は「ペリクル実用化で、EUV露光の適用レイヤー数は増え、露光回数も増える。それがASMLの戦略だろう」と話す。ペリクル開発も、全ては本丸の露光装置のためというわけだ。

三井化学は、ASMLからライセンス契約を受け、EUVペリクルの生産設備を新設。5月に商業生産を始めた。奥山部長は「EUV露光装置の販売台数をベースに数年は(ペリクル生産量も)増えていくだろう」と期待を寄せる。

EUVペリクルの活用が見込まれるのは特にロジックIC向けだ。台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子はEUVを活用し、現在回路線幅5ナノメートル(ナノは10億分の1)を量産しているが、ペリクルなしでの生産が主。今後両社が3ナノメートルのラインでペリクルを採用するかどうかが焦点となる。ペリクル完成までEUV露光を使用しない方針だった米インテルは、米アリゾナ州で建設する工場でEUV露光を導入予定。ペリクル実用化にめどがついたことで、EUV露光の導入に踏み切った可能性もある。

一方、EUVペリクルの実用化による恩恵が見込めるのは、露光装置に限らない。周辺工程の装置や部材などの需要にも追い風だ。例えば、レーザーテックは、光源にEUVを使ったEUV露光用フォトマスクの欠陥検査装置で100%のシェアを持つ。ペリクル付きのEUV用マスクの検査は同装置でしか行えず、導入拡大の期待が高まる。

課題はEUVペリクルの使用が必ずしも露光工程の歩留まり向上につながるとは限らないということ。ペリクルを使用した場合、透過率はペリクルなしの時と比べると低くなり、露光に時間がかかる可能性がある。和田木哲哉野村証券リサーチアナリストはリポートで「TSMCやサムスン電子などでペリクル付マスクの評価が行われ2―3年でペリクルの採用が広がる」との見方を示しており、ペリクルの本格的採用までには時間を要することになりそうだ。

日刊工業新聞2021年6月10日

キーワード
半導体 三井化学

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