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光触媒で新たな商機を掴む。異業種の中小企業が細菌・ウイルス対策に挑む

光触媒で新たな商機を掴む。異業種の中小企業が細菌・ウイルス対策に挑む

明晃化成工業がマスク用に開発した光触媒スプレー

異業種の中堅・中小企業が、光触媒による細菌・ウイルス対策の噴霧・施工サービスを交通機関や歯科関連向けから始めている。光触媒はアルコールと違い繰り返し使う必要がなく、空気清浄機と比べ初期費用や電気代も減らせる。本業の経験と人脈も生かし、これまで主に空気清浄機の技術や施設に利用されてきた光触媒で新たな商機をつかもうとしている。(大阪・田井茂)

セルコスモ

セルコスモ(高松市、小出克元社長)は2020年8月に光触媒の噴霧サービスをはじめ、11月にJR高松駅の観光案内所と併設コインロッカーに施工した。利用客が安心できる斬新(ざんしん)な感染対策技術を求められ、光触媒の客観的な試験データも示すと、信頼されたという。その後も高松琴平電気鉄道(高松市)の電車80両、地域のバス約800台から受注し施工した。

小出社長は特別養護老人ホームを経営し、感染対策には人一倍気を配っている。「予防に必死の顧客は即決する場合もある。機能を維持する再施工は2年先だが、意識の高い顧客はリピート受注も見込める」と期待する。

force

force(和歌山市、竹川裕之代表)は塾を経営し、生徒の感染対策から光触媒を知り、自ら噴霧サービスも20年4月に始めた。元教え子の歯科医院や歯科医療機器会社から施工し、同社はforceの代理店にもなった。竹川代表は「理科や物理の教育が得意で光触媒の原理もよく分かる。塾は忙しいが、歯科医関連から施工を増やしたい」と話す。

明晃化成工業

明晃化成工業(大阪府東大阪市、呉本啓郎社長)は03年からいち早く酸化チタンを研究し、光触媒加工の衣類カバーを月間5万枚販売している。セルコスモやforceなどの光触媒噴霧サービス施工会社向けにも原液の供給が急増した。

呉本社長は「20年3月から海外も含め問い合わせが急増し、毎日のように注文がある」とうれしい悲鳴を上げる。供給先は2次取引先以下も含め、10数社から約60社に増えた。

微細化技術で酸化チタンの表面積を増やす強い分解力、高純度、試験機関や国立大発ベンチャーなどとの協業による評価データを強みとする。2月には酸化チタン技術が東大阪商工会議所の第23回「東大阪モノづくり大賞」銅賞に選ばれた。

呉本社長は「光触媒は玉石混交。さほど効果のない物も混じり誇大広告がとても多い」と問題点も指摘する。このため、まず確実に信頼される誠実な事業グループ作りを進めていく。

光触媒は酸化チタンなどが太陽や照明の光を受けると生じる酸化力で有機物を分解する日本発の技術。社会的な感染対策の高まりから再評価され、ビジネスに参入する中堅・中小は今後も増えそうだ。

日刊工業新聞2021年6月2日

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