念じることでロボットを動かす!?脳活動をシートで読み取る先端研究がスゴい

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1152個の計測点を備えたシート型脳活動センサー。矢印(←)で示された箇所の裏面に0.3mm間隔で計測点が配置されている

「念じることでロボットを動かす」―。そんなSFの世界が少しずつ実現しつつある。脳とコンピューターの間の情報通信路を確立し、ロボットハンドなどを操作するICT技術・ブレインマシンインターフェース(BMI)の研究開発が情報通信研究機構(NICT)の脳情報通信融合研究センター(CiNet)で進められている。

BMIの研究開発は米国を筆頭に約20年余り各国の大学や研究機関がしのぎを削ってきたが、近年ではイーロン・マスク氏など民間からの参入も受け、さらに大きな注目を浴びている。一方で、BMIはいまだ社会に広く普及するには至っていない現状がある。

その大きな原因に、脳活動を読み取るセンサーの侵襲性の問題がある。現在、主流の方式は、剣山の形をした硬い電極を脳に直接刺し入れて脳の活動を読み取る。一方で剣山型の電極は、柔らかい脳を傷つけ、数カ月から数年の経過で脳情報の読み取り性能が低下してしまうことが知られている。

我々は電極を脳に「刺し入れる」のではなく、20マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の厚さのフレキシブルなシートを脳表に「置く」ことによる脳活動センサーの研究を進めている。この方式であれば脳を傷つける恐れが小さく、読み取り性能を長期間保つことが期待できる。

最近では半導体の製造にも用いられるマイクロ加工技術を応用し、シート上に配置される個々の計測点を約50マイクロメートル四方まで縮小することで、これまで類を見ない1152個の計測点を高密度に配置した高解像度センサーの開発に成功した。これまで捉えられなかった微細な脳活動の計測が可能となり、より自然で思いのままのロボットハンド制御や、脳機能のより深い理解に資することが期待できる。

センサーの高解像度化は大容量データの体内外通信という新たな課題も生み出した。NICTワイヤレスネットワーク研究センターとの連携により、超広帯域無線技術の活用に向けた取り組みも進めている。

最近ではコンピューターやネットワークの力を借りて人間同士が心を通わせ合う機会も多くなった。本研究が、物理的制約を取り払う新たなコミュニケーション手段実現の一助となることを期待している。

未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター・脳情報通信融合研究室研究員 海住太郎
2013年大阪市大医学部卒業。同年国立国際医療研究センター病院臨床研修医。17年CiNet研究員。18年阪大生命機能博士課程修了。脳と機械をつなぐBMIの研究に従事。

日刊工業新聞2021年4月20日

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