カメラ3台で溶接実演。三和商工が実施する顧客の気持ちを放さないオンライン営業
三和商工(東京都渋谷区、堀幸平社長)は、カメラ3台を自在に切り替えながら溶接を実演するなどオンラインならではの営業活動を展開している。新型コロナウイルス感染症の拡大で客先のオンライン対応が進んだため2020年5月に開始した。
訴求用動画や展示会向けの仮想現実(VR)を制作するなど、もともとIT(情報技術)を活用した営業には積極的だった。感染症拡大当初はスタジオにカメラ5台を設置。説明しながら画面を切り替えていたが、現在は3台体制にしている。
営業部の田口裕一氏は「営業はすべて1人で行う。営業マンの顔など全体を映すカメラや手元の動きを捉えるカメラ、10倍拡大カメラの3台のみにすることで製品説明に集中しやすくなった」と話す。
フリップボードを活用し分かりやすく説明する。顧客には「まさかフリップが出てくるとは」と驚かれる一方、「タイミングを見計らいながら質問しやすい」と好評だ。画面切り替え時のもたつきなど、少しの間で客の気持ちはそれてしまう。堀社長は「営業の様子を観察し、顧客の反応を見ながら徐々にエンターテインメント性を高めた」という。
総投資額は配信用のパソコンやカメラのほか、タブレット端末購入費などで約200万円。既に投資効果は表れていて、オンラインでのやりとりだけで金型補修向け精密肉盛り溶接機「ウェルドプロSW―V02」を3件受注した。堀社長は「メーカーとして『この方法でここまで説明しなければ製品を理解できないはず』と思いがちだ。だが、オンライン営業を通してあくまで顧客の納得感が大切だと再認識した」と振り返る。
タブレット端末を貸し出すこともある。購入した8台のうち、3台がモバイルデータ通信に対応。オンライン営業を今後も販売チャンネルの一つにする。堀社長は「海外の代理店を集めた勉強会などのほか、客先への実機持ち込みなどで難しかった女性営業職の実現にも可能性が出てきた」と期待している。(渋谷拓海)