キオクシアが2兆円で新工場。3次元NAND量産で世界大手に勝てるか
キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)は北上工場(岩手県北上市)にNAND型フラッシュメモリーの新製造棟を建設し、2023年に稼働する。総投資額は約2兆円に上る見込み。クラウドサービスや第5世代通信(5G)普及などの技術トレンドが中長期的な需要拡大を後押しする。巨額投資で世界最大手の韓国・サムスン電子や米インテルから事業買収するSKハイニックスに挑む。
キオクシアが北上工場に新設する第2製造棟(K2)の大きさは、20年前半に生産を始めた第1製造棟(K1)の2倍になる見通し。すでにK1に隣接する東側と北側の土地約15万平方メートルの整備工事に着手したほか、南東側の隣接地も取得に向けた交渉をしている。
導入する製造設備は主力の四日市工場(三重県四日市市)からの移管を中心に計画。このため2兆円規模の投資にはK2の建屋や付帯施設以外に、四日市工場への設備補充費用も含まれる。製造装置への投資は従来通り、提携する米ウエスタンデジタルと分担するとみられる。22年春をめどにK2の建設に着手する。23年春ごろに建屋を完成し、数カ月後に3次元(3D)NAND型フラッシュメモリーの生産を始める見込み。
キオクシアは現在、四日市工場でも新製造棟を建設中。2期に分けて建設するが、第1期分の完成は22年春を予定。北上工場と並行し生産能力の増強を急ぐ。一方、製品市況の回復が進まず、キオクシアの新規株式公開(IPO)計画が当初想定より遅れている。早くて21年夏以降との見方が大勢だ。
海外でも半導体メーカーの大型設備投資が相次ぐ。インテルが総額200億ドル(約2兆1800億円)かけて米国アリゾナ州に半導体の新工場を建てる。台湾積体電路製造(TSMC)も120億ドル(約1兆3000億円)を投じて同じアリゾナ州に工場を新設する。どちらも24年の稼働開始予定だ。
米中貿易摩擦を発端に経済安全保障の観点から日米欧中心に半導体の重要性が見直され、サプライチェーン(供給網)再構築のために国内生産回帰の動きが活発化している。
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