世界初の商用量子コンピューターが発表されて丸10年。今なお生きるアナログ技術
太陽の日周運動を利用して時刻を測る日時計は、最古のアナログコンピューターといわれる。紀元前3000年ごろには既に使われており、旧約聖書にも「見よ。わたしは、アハズの日時計におりた時計の影を、10度後に戻す」とある。
10年前の5月11日、カナダのDウエーブ・システムズが世界初の商用量子コンピューターを発表した。夢の量子コンピューターを実現したインパクトは大きく、米グーグルや米航空宇宙局(NASA)などが相次ぎ導入したことは記憶に新しい。
一方で、量子アニーリングで組み合わせ最適化問題の一つである「スピングラス問題」を解くこの量子コンピューターが、"アナログ式”であることはあまり知られていない。既存のコンピューターはすべてデジタル式だが、Dウエーブは人類が古くから使ってきたアナログ式の計算機に目をつけたのだ。
日時計が太陽光の入射角しか測れないように、量子アニーリングマシンもスピングラス問題しか解けない。それが弱みでもあるが、逆に言えばこの問題に置き換えられればどんな問題でも解ける。
ちなみに計算尺はアナログ式、そろばんはデジタル式だ。新型の量子アニーリングマシンの量子ビット数は5000個と従来の2・5倍に増強された。デジタルだからハイテクとは限らない。物理量をそのまま測るアナログ式計算機は今なお革新を続けている。