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「家電のような使いやすさ」。ファナックがデザインから“協働”を考えた初のロボット

「家電のような使いやすさ」。ファナックがデザインから“協働”を考えた初のロボット

使いやすさと生産財としてのこだわりを両立(稲葉取締役専務執行役員(右)と安部常務執行役員)

【FANUC Robot CRX―10iA】協働、人に優しく高機能

「人との協働はどうあるべきかという観点をデザイン段階から取り入れた初のロボット」。ファナックの稲葉清典取締役専務執行役員は協働ロボット「CRX―10iA」をこう表現する。労働力不足解消や自動化のため、安全柵が必要なく人の隣で作業できる協働ロボットの需要は増している。一方、ロボットの活用経験がない現場では、専門的な知見を要する産業用ロボットの導入に二の足を踏むケースもある。

この課題に対し同社が投じた一手がCRXの投入だ。「家電のような使いやすさと信頼性・保守性・量産製造性という生産財としてのこだわりを両立した」(稲葉取締役専務執行役員)。

開発ではメカ機構やソフトウエア、制御装置などを手がけるメンバーが徹底して「人に優しいデザイン」「使いやすいロボット」を模索。角張った産業用ロボットとは一線を画し、スリムで丸みを帯びた外形や部屋の壁紙のように白を基調とした落ち着いた色合いに仕上げた。安部健一郎常務執行役員ロボット機構研究開発本部長は「10台の協働ロボットに囲まれて仕事をする状況を想像した」と振り返る。アームを手で軽く動かせる技術や、使い慣れたタブレット端末の操作感も実現していった。

すっきりした外見だが、内部は同社が積み重ねてきた知見や技術が詰まっている。0・1ミリメートル単位で材料の厚さを変えながら開発し、剛性と軽量化を両立。深さ1メートルの水槽に浸水させても壊れない防塵・防滴対応も施した。安部常務執行役員は「従来のロボットで可能なことをすべて実現した」と胸を張る。

コロナ禍で製造現場の自動化だけでなく「3密」回避という新たなニーズも顕在化。稲葉取締役専務執行役員は「外部環境の変化や活用領域、顧客層の拡大に伴い、ロボットに求められる機能的価値も変化している」と語る。CRXは従来の延長線上にない価値に対する挑戦の「最初の1歩」であり、裾野を広げ、次の開発につながる顧客のニーズを吸い上げる役割も併せ持つ。(川口拓洋)

【製品プロフィル】

使いやすさ・安全性・高信頼性を兼ね備えた協働ロボット。タブレット端末で簡単に操作可能。必要な動作や命令はメーンメニューに用意しており、画面内のアイコンをドラッグ&ドロップすることで教示できる。100ボルトの電源に対応。運搬にもこだわる。梱包(こんぽう)材が人手で運ぶ治具の代わりになり、ロボットを安全に持ち運べる。


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日刊工業新聞2021年2月8日

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