世界シェア6割守り抜く!ファナック・安川電機・川重の産業ロボット大手の供給責任
重い供給責任
産業用ロボット大手3社は「生産を多極化」し、供給責任を果たすことを至上命令としている。顧客である国内外の自動車、半導体メーカーなどに対して「迷惑をかけない」ため、外部環境の変化へ迅速に対応しなければならない。日本のロボット産業は高い競争力を誇り、世界シェア6割弱を占める。この地位を守りきるためにも、生産体制の整備に余念がない。
「ビジネスを永続的にするためには供給責任は大事。これはお客さまとの信頼関係でもある」と強調するのはファナックの山口賢治社長だ。一つの契機は2011年の東日本大震災。これ以後、生産体制強靱(きょうじん)化への取り組みを加速した。震災後すぐに着手したのは非常用発電所の構築。山梨県忍野村の本社と茨城県筑西市の筑波工場にそれぞれ設置し、電力不足でも自社でまかなえる体制を整えた。
続いて16年には栃木県壬生町に壬生工場を新設し、シェアの高い数値制御(NC)、モーター、アンプの生産を多極化した。「減価償却費が増えると利益は減るが不測の事態が起これば結果的に我々に跳ね返る。製造業は供給を続けることが大切」(山口社長)と複数拠点の重要性を語る。
地産地消
安川電機と川崎重工業は日本と中国での生産が可能だ。「主力製品のサーボモーター、インバーター、ロボットは日本と中国の2拠点体制が整っている」と話すのは安川電機の林田歩理事。「地産地消が当社のスタイル。現地でモノを調達・製造・販売する」と続ける。これが直近の新型コロナウイルス感染症でも機能した。「中国が止まっても日本が動く。逆もある。完全ではないが、互いにカバーできる」(林田理事)と手応えを感じている。さらに、システム上で両国の生産計画を切り替えられる状態を目指し、デジタル変革(DX)を進める。
川重は13年に中国・崑山市に調達拠点を設置、15年には同重慶市と蘇州市に生産拠点を置いた。執行役員の高木登ロボットディビジョン長は「中国は地産地消。それ以外は輸送コストなどを比べ日本か中国のどちらかから提供する」という。また、半導体搬送用ロボットは明石工場(兵庫県明石市)と西神戸工場(神戸市西区)で手がけるなど国内でも2拠点化を進める。「ニーズがある限り、供給し続ける」(高木執行役員)との意志は固い。
最後は人
各社は生産の多極化だけでなく、サプライヤーとの情報連携、サービス拠点の拡充、安否確認システムの導入などあらゆる対応を網羅する。それでも新型コロナのように時として予想のできない脅威が襲う。対応する手だては「最終的には人」(ファナックの山口社長)だ。有事でも社員がレジリエンス(復元力)を発揮できるよう日々のやりがいや意欲が重要になる。有事の対応は、平時の備えで決まってくる。
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