コンビニ・スーパーが宅配需要に知恵絞る。勝ち残りは誰か
コンビニエンスストア、スーパーが宅配サービスの拡充を急いでいる。ローソンが新たなデリバリーサービス「Wolt(ウォルト)」を導入。セブン―イレブン・ジャパンも、ネットコンビニを拡大する。ライフコーポレーションは配送エリアを広げる。コロナ禍で外出自粛や店舗での買い物を敬遠する動きなどが進み、デリバリー市場が急拡大。サービス網を速やかに整え、需要を確実に取り込む。(編集委員・大友裕登)
ローソンは、ウォルトによるデリバリーサービスを都内のナチュラルローソン13店舗で始めた。これにより、手がけるデリバリーサービスは「ウーバーイーツ」「フードパンダ」と合わせ合計3社となり、導入店舗は28都道府県の1569店舗となる。
デリバリー導入を一気に拡大してきたローソン。吉田泰治新規サービス推進部長は、2020年3月と21年3月との比較で「店舗数では約100倍。月次の総売り上げは60倍に成長」という。拡大し続ける市場で、さらなる攻勢をかける。
22年2月までに3000店舗を目指す方針だ。サービス提供エリアも拡大。6月までに北海道の旭川市・函館市、7―8月には岐阜、三重、佐賀、長崎の4県で行う予定だ。
吉田部長は「海外と比べると、まだまだ成長余地がある市場」とみる。店舗展開に加え、商品群の拡充・見直しを進め成長市場を開拓する構えだ。
セブン―イレブンは、利用者がスマートフォンで注文し、商品を届けるネットコンビニ「セブン―イレブンネットコンビニ」を22年2月期中に21年2月時点比約2・9倍の1000店舗に拡大する。2万1000店超の店舗網からすると、慎重な進め方の印象だが、青山誠一執行役員は「システムを作り上げるのが最優先」と強調。システム構築により「一気に拡大可能」(青山執行役員)としており、急拡大も見据える。
首都圏・近畿圏でスーパーを展開するライフは21年に入り、埼玉県、千葉県、兵庫県を配送サービス対象に追加。さらに、神奈川県や大阪府で対象エリアを拡大した。
ライフの配送サービスは、米アマゾン・ドット・コムの有料会員サービス「アマゾンプライム」の会員を対象に、店舗で扱う生鮮食品や総菜を利用者の自宅に届ける。他社同様に成長著しい分野だ。
配送サービスとネットスーパーの「EC事業」の21年度売上高見通しは、前年度比約2倍の100億円。30年度には1000億円の計画を掲げる。
岩崎高治社長は「ネットビジネスを成功させるには三つのキーがある。『店舗・人員のオペレーション』『システム』『配送』の三つを高いレベルで改善していく」と話す。ピッキングを行う人員の確保や、モバイルアプリケーション(応用ソフト)の投入、配送を手がける共同出資会社の設立を決めるなど、事業拡大の布石を打つ。
コロナ禍で注目度が一段と高まったデリバリー市場。小売りだけでなく、外食もサービスを強化しており、業界の垣根を越えた顧客争奪戦が進むだろう。サービスインフラ整備のスピードに加え、顧客にとって魅力的な商品の開発など、成長市場での勝ち残りに向けて各社が知恵を絞る。