熊の捜索・捕獲も!石川県加賀市がドローン事業に挑む

石川県加賀市・宮元陸市長インタビュー

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3Dマップの一例

「加賀スマートシティ宣言」により、全国から注目を浴びている石川県加賀市。ドローン事業はスマートシティ構想にも包含され、今年度から本格的に事業に参入するという。そこで加賀市長の宮元陸さんに、自治体におけるドローンの利活用の可能性と今後の展望について聞いた。

ドローンによる撮影で、熊が潜む場所を特定できた

-人里に出没した熊の捜索が、ドローンでできたそうですね。

「商業施設に熊が迷い込んだことで、一躍全国に加賀市の名が知られることになりました。お恥ずかしい話です。騒動の最中、ドローンのAI管制システムなどを作る企業から『人間が近づくと危ないので、ドローンを飛ばして熊を探したらどうか』という提案があり、即座に採用しました」

「熊が潜んでいるエリアを特定し、施設の内部を順番に撮影をしながら捜索していきました。しかしどこにも熊の姿が写っていない。最後に一番奥の食料品売場の保管室だけとなったので、そこに熊が潜んでいることを想定して捕獲することができました」

ドローンが撮影した商業施設の画像
 -街の3Dマップを作り、それを元に飛行させたと聞きました。

「熊が目撃された場所の3Dマップを簡単に作り、それを頼りに飛行させ、赤外線カメラととともに探索しました。マップの作成は、前述の企業と共同で行なっています。本来ならば、3Dマップを物資の輸送や観光目的に使うはずが、図らずもクマの探索に使うことになったのは予想外で…」

-今後加賀市全域の3Dマップを作るそうですね。

「2021年度中に完成する予定です。これがあれば、ドローンが障害物を避けて飛行できるので、目視外の自律飛行が可能になります。市内全域の3Dマップの作成は、他の自治体ではやっていませんので、自慢できることかもしれません。地図が完成すると、いろんな分野でドローンの利活用ができますから」

-具体的にはどんなことでしょう?

「市内には全国的に有名な温泉が3つもあるので、『観光』と『観光に絡めた物資の輸送』を計画中です。誰でも簡単にドローン航路を作成することができるシステムにより、温泉地を自動飛行させることができます。そこで、観光客自身でドローン航路を作成し、自動飛行させるサービスを2つ考えました」

「1つは『空撮』。ドローン航路を作成度、ドローンで撮影したビデオ映像を観光客へのお土産として渡します。さらにはSNS等での公開を促進します」

「もう1つは『物流』。市内の片山津温泉に隣接する柴山潟という湖を観光中の方に向け、宿泊ホテルからドローンによる飲食物の配送を行うというものです。以上のように観光分野にドローンを活用することで、アフターコロナでのリアル観光客の誘客を狙います」

「また、農薬散布、高圧線の点検、さらには医薬品の輸送といったところも考えております」

-どれも実現の可能性が高そうですね。

「はい。今年の春先に、ドローンのビジネスモデルを模索する事業者との会議でも、実装に向けての話し合いを行いました。今年は、防災や災害状況の確認を目的とするドローンの購入を考えています。ただ、医療品に関しては、取り扱い注意のものがあるので、ハードルが高いかもしれません」

-医療品の取り扱いのほか、ドローン事業の課題はどんなことでしょうか?

「天候に左右されることと、ドローンが高額なので費用対効果が低いことです。ただし、用途にもよりますね。物資の輸送はもっとリーズナブルな手段で代替できますが、熊の探索や防災など、人間が行うには危険を伴う場合は、投資をしても良いかと考えています」

-3Dマップについて、どこかからお問い合わせはありましたか?

「加賀市の隣の小松市に、航空自衛隊小松基地があります。そちらの職員の方が見学にいらっしゃいました。自衛隊の広大な敷地の警備など、利活用の参考になさったようですね」

すべてはスマートシティ構想に帰結する

-加賀市はドローン事業による企業誘致も積極的に行なっていますが、手応えはどうでしょうか?

「他より先んじてやっていますが、なかなか競争が激しくて苦戦しています……。加賀市には田んぼ、国定公園、海岸など、ドローンを安全に飛ばせるところがたくさんありますが、それはどこの地方も同じ。そこで加賀市が一歩抜きん出るには、住民の大きな理解が必要です。つまり、安全・安心に飛ばせる場所があって、さらに住民が歓迎ムードであれば、誘致の可能性が高くなります。しかし、一貫した戦略とスピード感を持ってやらないと、遅れをとってしまいます」

-ドローンも最終的には「スマートシティ構想」に結びつくわけですね。

「その通りです。私はいろんな事業に手を出している首長だと思われているようですが、全ては『スマートシティ構想』に帰結します。近い未来では『空飛ぶクルマ』に大きな可能性を感じています。空は障害物が少ないので、地上を走る自動運転の車より先に実用化されるのではないでしょうか。加賀市は人口減少が続く『消滅可能性都市』なので、ドローンに限らず新しい産業に投資して、街を発展させていくのはマストです」

-子供達のプログラミング教育も未来への投資ですね。

「はい。小・中学生のプログラミング教育は全国より前倒しで行なっていますし、『ロボレーブ』というロボットの国際大会も毎年加賀市で開催しています。また、日本初の『コンピュータクラブハウス』を作って、子どもが家庭や学校以外でITを学べる環境も作りました。プログラミングやロボットの勉強は、ドローンのオペレーションにもつながります。私は、将来、加賀市を“日本のシリコンバレー”にしたい。そのためにも未来を担う子供達への教育に、もっと注力していくべきでしょう。それが消滅可能性都市から脱却するための重要なカギだと思っております」

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