自転車用チャイルドシートで国内シェア7割、オージーケー技研の市場を創る力
オージーケー技研(大阪府東大阪市、木村泰治社長)は樹脂製の自転車関連部品を製造販売する。特に自転車用チャイルドシートは国内シェア7割を占める。創業時はセルロイド製の自転車グリップが主力製品だったが、2代目である木村社長の祖父・景雨氏がプラスチックの射出成形に着目。1960年に射出成形によるグリップを開発して以降、プラスチックでできる自転車パーツ製品を増やしていった。
「90年代ごろからパーツ製造を中国へ移管するメーカーが増え、売り先がない状況に陥った」(木村社長)のを機に、自転車購入後でも追加購入が期待できるカゴやチャイルドシートの開発に注力する。3代目である父・秀元氏の開発方針は「仮説を立てて他がやらないことでも先行投資する」ことだった。
97年、主流だった鉄製に代わる全樹脂製チャイルドシートを開発。当時自転車の価格が1万円を切る中、チャイルドシート単体の価格は1万円台。「売れるわけがないという声もあったが、少子化が進み子どもをより大事にする親が増えるはず」(木村社長)という仮説が的中し、ヒット商品となった。
現在、チャイルドシートに関しては自社ブランド品をメーンにODM(相手先ブランドによる設計・生産)も手がける。木村社長は「チャイルドシートはメーカーもノウハウがなく、当社が新しい市場を作ってきた」と自負する。
コロナ禍で売り上げは前年と比べて2割ほど落ち込んだ一方で、社内を見つめ直す時間は増えた。人事評価制度や経営理念の再構築、3カ年の中期経営計画の策定など、以前から計画していた社内整備を加速させた。
1月から新たに掲げたスローガンは「家族の移動創造企業」。積極的にユーザーとの接点を持ち、生の声を集めている。自転車の選び方や交通ルールなどを親子で学ぶ講座や、試乗会などのイベント、会員制交流サイト(SNS)などを活用。2018年に販売を始めた幼児2人同乗用3輪自転車「ふたごじてんしゃ」も双子の母親の相談から誕生した製品だ。新たな移動方法を創り出すため、ユーザーとの接点を活用して製品開発を進める。
19年には世界三大デザイン賞の一つであるドイツの「iFデザインアワード」でゴールド賞を受賞。海外展開は欧州を優先的にアジアの市場開拓も視野に入れ、各国のニーズにあったデザインで攻勢に出る。(京都・新庄悠)
投資会社の目線/大阪中小企業投資育成 事業ソリューション部・山田祐規子主任
オージーケー技研は創業期から下請けではなく自社ブランドにこだわり続けてきた。時代を先読みしながら市場ニーズを細かく拾い上げた商品はユーザーの高い支持を得ている。使用者の声に真摯(しんし)に向き合う開発精神により、今後も同社の躍進は続く。