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「ビヨンド5G」利活用へ教育研究、東大が文理融合を狙うバーチャル組織立ち上げる

東京大学は第5世代通信(5G)と次の世代「ビヨンド5G」(6G)の利活用で横断的な教育研究を手がける「次世代サイバーインフラ連携研究機構」を立ち上げた。法や倫理、公共政策など人文・社会科学系も含む12部局が持つ知識を統合。キャンパス全体をテストベッドとし、データガバナンスを含む実践的な「総合知」の活用に取り組む。すでに企業2社の支援による社会連携講座の設置も決めた。

次世代の6Gは速度や容量の高度化だけでなく、カーボンニュートラルに資する超低消費電力や超安全性、宇宙や海洋でも接続できる拡張性、自動設定の自律性などの新機能が求められている。また通信ビッグデータ(大量データ)におけるプライバシーの倫理と規制、情報経済政策など自然科学系だけでは対応できない重要な観点が多い。

これら課題に対応するため、東大は次世代サイバーインフラ連携研究機構を設置。学内12部局から各2人程度の研究者が参加する。基礎は工学系、理学系、情報理工学系研究科、応用は空間情報科学研究センターや生産技術研究所、利用面では未来ビジョン研究センター、法学政治学研究科、情報学環など。責任部局は工学系研究科で、機構長は中尾彰宏教授が務める。

当面はバーチャル組織で外部資金を獲得して活動する。秋学期に企業や官僚、外国大学の研究者・有識者による講義も立ち上げる。東大が始めた外国人教員がウエブ会議システムを使ってリモート講義などを行う制度も活用する。連携先はフィンランドのウル大学、アールト大学、米国のノースイースタン大学などを予定している。総務省が立ち上げた「ビヨンド5G推進コンソーシアム」などとも連携していく。

日刊工業新聞2021年4月12日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
どの総合大学も重要性と難しさを感じている文理融合だが、「自然科学の技術で次の社会を築く上で、人文・社会科学の知をとりこむ」という今回のようなケースが、取り組む上でのお薦めとなる。産業界の関心も高いテーマなら、人文・社会科学系の研究者に「我々の研究テーマは、どのような切り口にすれば産学連携で歓迎されるのか」を知ってもらう場として、有意義なのではないか。

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