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「ワークマン」成長の立役者が伝えたい、余計なことは一切しない経営

ワークマン専務・土屋哲雄氏に聞く「頭の良い人ほど先読みして早めに諦める」
「ワークマン」成長の立役者が伝えたい、余計なことは一切しない経営

「ワークマンプラス」の成功はデータ活用で店舗の品ぞろえを最適化する経営手法が大きな要因(同社公式サイトより)

―『ワークマン式「しない経営」』を執筆した動機は。
「新業態『ワークマンプラス』の成功は、データ活用で店舗の品ぞろえを最適化する経営手法が大きな要因だ。これが完成したのを機に記録として残したいと考えた。誰がやっても売り上げが伸びる仕組みづくりが重要だ。突出した能力を持つ人や特別頑張った人に頼ると逆に引き継ぎができない」

―特に伝えたいことは。
「真面目な経営者ほど数多くの目標を掲げ、短い期間で達成したがる。しかし、それが目標達成の阻害要因になっている。我々の目標は客層拡大で、実現の手段は『しない経営』とエクセルを活用した『エクセル経営』のみ。『しない経営』はやらないことが重要ではなく、実行できることだけに集中すること」

「余計なことは一切せず、社員にストレスも与えないし、目標達成の期限を設定しない。その代わり必達を目指す。非現実的な目標があると、頭の良い人ほど先読みして早めに諦めてしまう。時間を区切る必要はない。担当者を代えることなく『できるまでやっていいです』と伝えた方が士気も高まり、自発的に取り組むようになる」

―余計なことをせずに成長できた理由をどうみていますか。
「アウトドア向けに新規開発した製品はない。作業服というとドメインが小さいが、機能性ウエアといえば、アウトドアやスポーツ、レインスーツも入る。機能性ウエアで低価格を実現する軸から踏み外さず、圧倒的に競争優位な体制をつくることを目標に取り組んできた」

―どんな企業、役職の人に読んでほしいですか。
「まず経営に関与するマネジャーや役員、経営者らに読んでもらいたい。新人社員にも会社の考えや意見は一つではないと知り、まったく真逆のことを考えている経営者を知ることで視野を広げてほしい」

―ワークマンプラスの成功は、業績向上以外にどんな影響を及ぼしましたか。 「作業服だけを手がけている時は社内に閉塞(へいそく)感があった。これまで小さな市場の深掘りを得意としていた分、新しい事業に取り組んで横に広げるという発想自体がなかった。私は2012年に入社し、2年程度で『このままでは先がない』と気づいた。そこで新しいことに取り組むよう方向付けしようと考えた」

「まず『これからアウトドア分野に取り組む』と言ったら社員の目が輝いた。幹部が口出しせず勝手に作らせると製品が良くなった。店舗の内装にもケチケチせずに、お金をどんどん使って良いと伝えた。ワークマンの伝統的な良い文化とそれに刺激を与える人間がかみ合い、うまくいった格好だ」

―「しない経営」は他の企業にも適用可能でしょうか。
「自発性が重要だ。『ワーク・イン・ライフ』が一つのポイントになる。例えば、会社には長時間いなくても休みの日に頭の中で仕事をしているようなイメージだ。会社が仕事を強制するとろくな結果は出ないだろう。経営者はたくさんのことを指図してはいけない」

「誰がやっても売り上げが伸びる仕組みづくりが重要」と土屋さん
<プロフィール>
土屋哲雄(つちや・てつお)氏 ワークマン専務。75年(昭50)東大経卒、同年三井物産入社。88年三井物産デジタル社長。06年三井情報開発(現三井情報)取締役執行役員。08年三井情報役員待遇フェロー。12年ワークマン常勤顧問、同年常務。19年専務。埼玉県出身。68歳。
(聞き手=群馬支局長・古谷一樹)
日刊工業新聞2021年3月8日

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