九州大のデータサイエンス教育が取り入れた学生の興味を引く手法
九州大学はオープンサイエンス、オープンエデュケーション、オープンマインドを数理・データサイエンス(DS)教育研究のスローガンとする。教育を推進する数理・データサイエンス教育研究センターには人文学、芸術工学、病院などからも参加。総合大学として文系、理系を問わない全学体制で取り組みを進める。
低年次向け拡充
1年生をはじめとする低年次向けでは科目「情報科学」(全15回)の2コマをDS教育としていたが、21年度からは7コマに増やす予定だ。
教育内容は具体的で学生の興味を引き、DSを学ぶ意義を分かりやすく伝えるのがポイント。通常、学科ごとに扱うデータや分析方法は異なる。そこで受講者中の文系や農学系の多さなどに合わせて内容を調節する。数式はほとんど使わず、「ベクトル」など用語一つひとつも受講者を想定して吟味する。
最初に見せる
教育では冒頭で、どのようなデータが、どのように分析されているかを具体的に示す。「自分たちの問題として取り組めるように、実際に使われている場を最初に見せるべきだ」(内田誠一センター長)との考えがある。
センターでは文系を含めて、どのようなデータ分析を活用しているかという研究者情報を集めている。豊富なデータ利用例を蓄積し、常に更新している。
教育内容を見直すために学生の反応も重視する。アンケートを従来実施していたが、20年度はeラーニングの機会を活用。電子教科書のページごとに、学生が「わかった」「わからない」を知らせるボタンを配置して感想を可視化した。
【実践的な学び】
実践的な学びのため、20年度に始めた仕組みの一つが学内インターンシップ制度。医学系や土木系、人文系など、さまざまな分野の学生、研究者が情報系の研究室に一定期間滞在して学んだ。
センターはDSを活用した研究の後押しにも取り組む。学内に向けては、データ分析を研究に使っている研究者向けに支援プログラムを実施。活用事例の収集にもつなげており、100件以上が集まっている。
またセンターは九州・沖縄の拠点校として地域のDS教育をけん引しており、他大学への連携の呼びかけやノウハウの提供なども行っている。