日本初のデータサイエンス学部を設置した滋賀大学の危機感
数理・データサイエンス(DS)教育強化拠点コンソーシアムの拠点校の一つである滋賀大学は、同事業が始まった2017年に日本初のデータサイエンス学部を設置した。コンピューター科学と統計学、二つの観点を軸に企業で課題解決できる人材育成を進める。同学部と大学院データサイエンス研究科の竹村彰通学部長・研究科長はDSを「価値創造のための新たな科学」と位置付ける。
同学部は欧米などに比べ、データ分析技術や統計の専門性を持つ人材が少ないことへの危機感からできた。教員は40人体制で、さまざまな領域のビッグデータ(大量データ)を扱える人材を育成する。コンピューター科学としては大規模データを収集、加工、処理するための技術、統計学としてはデータを分析するための知識や技術を身に付ける。その上で、さまざまな課題に対し、データ分析に基づき解決や改善を提案する力を養う。
【文系も対応】
学部生は1学年約100人、大学院生は1学年20人。大学院生は21年度から1学年40人へ拡大し、順調に志望者を集めている。学部生は理系が6割、文系が4割。1年生で数学を含めた統計学とコンピューターの基礎を丁寧に扱うことで、高校で文系だった学生にも対応している。
応用の演習では企業や自治体との連携により実務データに基づいた課題解決型学習に取り組む。連携先はIT企業や製造業、金融、小売業、信用調査会社など50社以上。竹村学部長・研究科長は「大学が協力を得るだけでは企業にとって連携の魅力がない」と指摘する。企業でも応用できる教育プログラム開発や分析の方法論の共同研究、課題解決力の提供が連携実現に結びついている。
コンソーシアムでは「カリキュラムを提供していくのが役目」と竹村学部長・研究科長は力を込める。「大学生のためのデータサイエンス」シリーズとしてオンライン講座とテキストを確立した。また、中部・東海ブロックの拠点校を務めており、DS教育を進める大学の相談を受けている。ただ、データを扱う特性から「世の中の動きの速さや技術の変化に、カリキュラムも対応していかねばならない」と課題を意識する。「DS教育で先頭を走り続けたい」と意欲は強い。