今年はリアルとオンラインの同時開催!CEATECが挑む「シームレスで革新的な展示会」
Society(ソサエティー)5.0の総合展である「CEATEC 2021」が、幕張メッセ会場とオンライン会場を組み合わせた展示会として開催されることが決まった。昨年のCEATEC 2020 ONLINEは、新型コロナウイルスの影響で、国内初の大規模な完全オンライン展示会として開催され、延べ15万人以上が来場した。今年は、リアルとオンラインをシームレスにつなぐという新たなテーマに挑む。
主催者である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、3月24日から、オンラインで出展受付を開始、6月下旬からは来場者登録を始める。来場者は、一度登録すれば、幕張メッセ会場にもオンライン会場にも参加できる。
発表された内容によると、CEATEC 2021は、10月19日~22日に開催される幕張メッセ会場での展示と、9月28日~11月30日まで開催されるオンライン会場での展示やカンファレンスを中心に実施。会期を前後して、5月下旬~10月18日のプレイベント、10月23日~11月30日のアフターイベントも開催、半年間に及ぶプログラムが用意されている。
幕張メッセの会場では、CPS/IoT、Society 5.0の実現に向けたトータルソリューションや製品が出展される「トータルソリューションエリア」、Society 5.0の実現を支える電子部品や電子デバイス、ソフトウェア、5Gなどのテクノロジーを展示する「デバイス&テクノロジーエリア」、流通・運輸・エネルギー・建設・金融・観光などのあらゆる業種の企業が出展し、次世代モビリティやスマートファクトリー、スマートホームといった分野での共創を実現する「テーマエリア」、未来を担う国内外のスタートアップ企業や海外諸機関のパビリオンを複合的に展開する「Co-Creation PARK」の4つの展示エリアで構成する予定だ。
CEATEC エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、「新型コロナウイルス感染症の脅威が続いており、今年10月の幕張メッセ会場での開催についても、予断を許さない状況にあるのは確か」としながらも、「出展者や来場者には、オンライン開催のメリットが理解される一方で、新製品や新技術に触れ、会場の熱気を感じることができるリアルの会場でしか実現できないことへの期待も多い」と話す。
幕張メッセ会場では、来場者や出展者、運営関係者などに対して、設営から撤収までの会期全体において、新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底。新たに非接触による入退場の仕組みを導入する。ブース設営は、4方向を通路とした小間を増やすことや、通路幅をできる限り拡張するなど、新たな会場づくりを目指す。
一方、オンライン会場では、「好きな時間に、どこからでも来場ができることに加え、会場のキャパシティに限定されないコンファレンスの聴講が可能になるなど、オンラインならではの優位性を生かしたい」(鹿野氏)という。CEATEC 2020 ONLINEでも好評だったオリジナルに開発したオンライン展示会用ツールを継続して利用する。チャット機能による来場者とコミュニケーションや、来場者の属性や履歴などをリアルタイムに収集する機能、目的のブースにたどり着きやすい検索機能などを提供する。
その一方で、ツールを活用して、指定の画像や文章を用意するだけで、出展各社はHTMLなどの知識がなくても、リッチなブースを作成できるようにする。コンテンツは会期中も容易にリアルタイムに変更・追加することが可能で、独自のオンラインブースを構築したいといった要望にも対応する。
また、オンラインを活用したプレイベントとして、「CEATEC Channel ONLINEセミナー」を開催する。6月22日~25日は、「カーボンニュートラル(グリーン×デジタル)」、7月13日~16日は「5G」、8月24日~27日は「モビリティ」、9月14日~17日は「スーパーシティ/スマートシティ」。今後はこれ以外のプレイベントも追加されるほか、アフターイベントの内容も順次公表していく。政府は10月10日、11日を「デジタルの日」としているが、CEATEC 2021は、9月に発足する予定のデジタル庁と連携しながら、会期前、会期中、会期後を通じて、関連活動を行うという。
IT・エレクトロニクス業界の最新技術を展示会に生かす
CEATEC 2021が目指しているのは、「サイバーとフィジカルのそれぞれの優位性をシームレスに統合する革新的な展示会」。幕張メッセ会場とオンライン会場を組みあわせた初の大規模展示会となり、それぞれの会場ならではのメリットを生かしながら、出展者は新たなテクノロジーや製品を発信し、来場者はそれに出会うことができる。
また、双方のメリットを活用した新たな共創の場を提案するのに加えて、コロナ禍において万全な感染症対策を行った入退場方法や展示方法の実現、会期前のプレイベントと会期中幕張メッセ/オンラインの同時開催、会期後のアフターイベントという3つのステップを踏みながら、6カ月に渡り、ニューノーマル社会における重要課題の解決に向けたメッセージを発信し続けるというのも新たな試みだ。
鹿野氏は「新たな挑戦は、2022年以降にもつながる新たな展示会の姿を追求するものになる」と語る。こうした挑戦に踏み出せるのは、これまでに展示会のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んできた知見があるからだろう。
2016年にそれまでの家電見本市から脱却し、CPS/IoT総合展へと移行。それに伴い、出展者向けにタブレットを活用したコミュニケーションツールの導入や、オンラインマニュアルを採用。さらに来場者向けスマートフォンアプリの提供や、インフォメーションチャットボットの導入、メディア向け顔認証登録システムも採用してきた。昨年、完全オンライン開催を実現するためにオンライン展示会用システムを独自に開発し、コンファレンス用の収録・配信スタジオも構築した。
主催者であるJEITAには、IT・エレクトロニクス業界を中心に様々な業種の企業が参画しており、最新のテクノロジーを開発、生産、利活用している企業の集まりであることから、会員企業が持つ数々の技術や製品、活用ノウハウが、新たな展示会の実現にも、数多く生かされることになるだろう。ニューノーマル社会に向けた数多くの製品、技術、サービスがオンラインを通じて提案され、これらがCEATEC 2021で実際に活用されることが期待される。
(文=フリージャーナリスト・大河原克行)